結婚と離婚と氏の変更

婚姻や離婚の際には、原則的にどちらかの配偶者の姓が変わります。

ところが、戸籍届をしたり、例外的なケースでは、姓が変更されずに、以前のままの姓を名乗ることになります。

離婚のケース

離婚の場合、離婚届をすると旧姓の戸籍を新しく作ることになりますが、離婚の日から3か月以内に戸籍届出をすることによって、婚姻中の姓を名乗ることが出来ます。(民法766条2項、戸籍法77条の2)

ところが、戸籍法77条の2の届をして、婚姻中の姓を名乗ったものの、生活をしていくうち旧姓を名乗らなければならなくなったり、名乗った方が良い事情が起こることもあります。

このケースについて福岡高等裁判所は、

”婚姻によって氏を改めたものは、離婚により原則として婚姻前の氏に服するものであり、婚姻中の氏の使用は例外であるから、婚姻中の氏の継続使用を選択した者の婚姻前の変更の場合には、それが戸籍法第107条第1項の「やむを得ない事由」に該当するか否かを判断するに当たり、一般の氏の変更の場合よりも、緩やかに解釈するのが相当である。”

と、判断基準を示し、旧姓に戻すことを許可しました。

要約すると、”離婚時に民法第766条第2項の届出をして、離婚後も婚姻中の姓を名乗っている人が、旧姓に戻そうとする場合は厳しくしない”と言うことです。

また、東京高等裁判所は、

(本件、旧姓に戻すための)氏の変更許可を求める動機や事情を考慮すると、本件申立てが恣意的なものとはいえないし、抗告人の氏が「〇〇」に変更されることに特に社会的に弊害があるとは認められず、戸籍法107条1項所定のやむを得ない事由があるものと認めることができる。

と判断しています。

つまり、よっぽどおかしな事情がない限りは、旧姓に戻す許可の審判がされます。また、離婚後、長期間婚姻中の氏を名乗っていても問題ありません。(東京高等裁判所平成26年10月2日)

たとえば離婚時に子供が小さかったので、戸籍届出をして婚姻中の姓を名乗っていたものの、子供が大人になり独立したので、旧姓に戻す(変更する)ケースは、許可されています。(こういったケースがほとんどだと思いますが)

また、戸籍届出をしたあと、旧姓以外の別の姓に変更したい場合は、これに当てはまらず、「やむを得ない事由」を厳しく判断されてしまします。

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結婚のケース

婚姻した際に名字が変わらない典型的なケースは、国際結婚です。外国籍の人と婚姻した場合、戸籍上の姓はそのままで、どこ国籍の誰と婚姻したかだけが、戸籍に記入されます。

ただし、戸籍法107条2項に、

”外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六ヶ月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。”

とあって、届出だけで姓を(配偶者の姓に)変えることができます。

このケースで、家庭裁判所の出番があるのは、

  • 1.諸事情で六ヶ月以内に届出をしなかった、できなかった場合
  • 2.変更後の姓が、特殊な場合

1.のケースですと、日本の法律は、婚姻中は同じ姓を名乗ることが原則と考えているようなので、六ヶ月以内に届出をしなかったことに、よっぽどひどい事情がない限りは、許可がされると思います。

2.のケースは、外国籍の配偶者側の国の法律が関わってきます。

過去の例ですと、配偶者の国で、「妻は夫の氏と自分の氏を結合して使用することができる」と法律に定められていて、たとえば、「田中」さんが、「スミス」さんと結婚して、戸籍は「スミス」に変更、そのうえで「スミス田中」と名乗って日常生活をしていたケースで、家庭裁判所は、戸籍の姓を「スミス田中」と変更することを許可しています。

2019年11月28日追記

上記2.のケースで一般に公開されている過去の許可された裁判例では、日本人と外国人配偶者の姓を並べて一つの姓とする、いわゆる「結合姓」については、厳格な要件を満たしていないと許可されないとされていました。(いずれも平成6年の神戸家庭裁判所、東京家庭裁判所の例)

ところが私が関与して件で、その要件を満たしていないような場合でも許可された例があります。

結合姓、複合姓を検討されている方は、問い合わせをする