虐待と改名手続

幼少期の虐待

事例は、幼少期に近親者から虐待を受け、戸籍上の氏名とは全く違う通称を名乗り生活をしていた方が、家庭裁判所に、氏と名前の変更許可を求めて、申立をした事例です。

虐待を理由としての改名手続

家庭裁判所は、

(申立人の氏名の変更理由が、)主観的事由であるけれども、精神的外傷の後遺症からの脱却を求めるものであり、(中略)戸籍上の氏名の使用を申立人に強制することは、申立人の社会生活上も支障を来たし、社会的に見ても不当であると解するのが相当である(中略)
以上により、申立人が氏を変更することについて、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があるものと認めるのが相当であり、また名の変更についても、単なる好悪の感情ではなく上記のような事由に基づくものであること及びその使用年数等を合わせ考えると、同法107条の2の「正当な事由」があるものと解するのが相当である。
と判断して、氏と名の変更を許可しています。

実例として

私も、件数としては少ないですが同様のケースの相談を受けたことがあります。

ご相談者の心中を察すると、すぐにでも裁判所に申立をしたいのですが、ご相談者が、自身の経済状態の関係で申立を躊躇してしまう場合や精神状態の関係で、申立に至らない場合もあります。そのうえ虐待の証拠を集めるのが難しいこと障害になります。

また、上の家庭裁判所の審判にもあるように、少なからず通称の使用実績を求められます。

2021年1月追記

上記のとおり虐待を理由にする氏名の変更は許可をする裁判例がありますが、担当する裁判官によって結果がだいぶ変わってしまうように感じています。

しかし、虐待の事実の証拠、現在にもある不利益(精神的なもの、物理的なもの)、通称の使用期間の3つのポイントが重要であることは変わりません。

特に精神的な不利益については、精神科の診断書が必須になると考えています。よく医師とコミュニケーションをとって、簡単な診断書ではなく、詳細な診断書を書いてもらえると許可される可能性も高くなると思います。

改名手続の対応として

申立の費用については、法テラスの利用で経済的負担のない場合もあります。

この様な理由によって氏名の変更をする事は、ご本人にとって緊急かつ重要なことだと私は考えています。費用等のことは心配されず、ご相談下さい。

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