呼称上の氏、戸籍上の氏と民法上の氏の法律的な違いと手続きでの影響

日本人は生まれた時に、自分の氏を取得します。

父母が婚姻しているときは、父母の氏を、婚姻していないときは母の氏を名乗ることになります。(民法790条

この生まれた時の氏は、民法上の氏と呼ばれます。

民法上の氏は、原則変わることはありませんが、結婚や養子縁組等の民法に規定されている以下の手続で変わります。

呼称上の氏/戸籍上の氏

民法で定められていない手続でも、氏を変更することができますが、この場合は民法上の氏は変わりません。

民法上の氏に変動がないけれども、戸籍上、戸籍の筆頭者の欄に記載される氏のことを、呼称上の氏又は戸籍上の氏と読んでいます。

この民法上の氏と呼称上/戸籍上の氏は、戸籍手続では大きな問題になりますが、戸籍手続以外の場面ではほとんど意味がありません。

民法上の氏は変わらないけれども、呼称上/戸籍上の氏が変わる例

民法上の氏は変わらず、呼称上/戸籍上の氏だけが変わる手続の代表例が戸籍法107条第1~4項の氏の変更許可の手続(改姓の手続)です。

第百七条 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
2 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
3 前項の規定によつて氏を変更した者が離婚、婚姻の取消し又は配偶者の死亡の日以後にその氏を変更の際に称していた氏に変更しようとするときは、その者は、その日から三箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
4 第一項の規定は、父又は母が外国人である者(戸籍の筆頭に記載した者又はその配偶者を除く。)でその氏をその父又は母の称している氏に変更しようとするものに準用する。

1~4項のどの手続でも、呼称上/戸籍上の氏が変わり、民法上の氏は変わりません。また、1項の手続(氏の変更許可の手続)だけがその戸籍に記録されている全員の呼称上/戸籍上の氏が変わります。

逆に言うと、2~4項の手続をした場合は、手続をした人のみ呼称上/戸籍上の氏が変わります。そして、手続をした人の新しい戸籍が作られます。

呼称上・戸籍上の氏が問題になる場合

呼称上の氏/戸籍上の氏は戸籍手続をする場合に大きな問題になることがあります。具体的には、民法790条1項の子の氏の変更手続きです。

第七百九十一条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。

ここで「子が父又は母と氏を異にする場合」というのは、民法上の氏が異なる場合をいいます。ですので、戸籍上は別の氏になっていても、民法上の氏が同じ場合はこの手続をすることができません。(例外的に可能な場合もあります。)

未婚の外国人母が日本人父の子を生んだ場合

未婚の外国人母が日本人父の子を出産した場合は、子供は父の戸籍に入らず、別途、子供について日本の戸籍を作る手続きが必要になります。

この時、日本の戸籍に記録される子供の氏は、子供の民法上の氏である外国人母の氏になります。(民法790条

したがって、子と父で民法上の氏が異なるので、裁判所の許可を得て子供の民法上の氏を、父の氏に変更することができます。(手続までに父母が結婚している場合は、裁判所の許可は不要です。)

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