改姓の手続きの流れ|申立てから氏の変更届までを司法書士がわかりやすく解説
改姓の手続きとは、戸籍法107条1項の規定にもとづいて戸籍に記録されている「氏」を変更するための手続です。単に普段名乗る呼び方を変えるものではなく、家庭裁判所の氏の変更許可を得た後、市区町村に氏の変更を届け出て、戸籍の氏を変更します。
参考:戸籍法107条
第百七条 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、氏及び氏の振り仮名を変更することについて家庭裁判所の許可を得て、その許可を得た氏及び氏の振り仮名を届け出なければならない。
以下略
手続きを進めるにあたって、現在の戸籍の確認や必要書類の準備に加えて、変更するために必要な「やむを得ない事由」を、どのように家庭裁判所に説明し、どのような資料で裏付けるかが重要です。
この手続きは、申立ての前の準備、家庭裁判所での審理や許可後の届出と、それぞれの段階でするべきことが異なります。どこか一つだけを見ても手続き全体は分かりにくいため、最初に全体の流れを押さえておくことも大切です。
この記事では、改姓の手続きの流れを、必要書類の準備から家庭裁判所への申立て、許可後の氏の変更届、その後の確認まで順に見ていきます。申立書の具体的な書き方、氏の変更届の作成方法、「やむを得ない事由」の詳しい考え方や個別事例については、関連記事もあわせてご案内します。
改姓の手続きはどのような流れで進むのですか
改姓の手続きは、必要な書類を集めて家庭裁判所に申立て、許可を受けた後に、市区町村へ氏の変更を届け出るという流れで進みます。家庭裁判所の許可を得ればすぐに終わる手続ではありません。
最初の段階では、戸籍などの必要書類を集め、申立てに向けた準備をします。改姓では、許可を得るための「やむを得ない事由」があることを申立書の中で説明し、必要に応じて、その事情を裏付ける資料を提出する必要があります。単に氏を変えたいという希望を述べるだけでは足りず、どのような事情があり、なぜ氏の変更が必要なのかを裁判所に示さなければなりません。
準備が整ったら、住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。家庭裁判所は、申立書の記載や提出された資料をもとに、「やむを得ない事由」があるかを審査して、氏の変更を許可するかどうかを判断します。そのため、改姓の手続きでは、申立ての前に事情を整理し、これをどのような資料で示すかを考えておくことが重要です。
家庭裁判所の許可が出ても、その時点で直ちに戸籍の氏が変わるわけではありません。許可後は確定証明書を取得し、市区町村へ氏の変更を届け出ることになります。届出が受理されて、はじめて戸籍に新しい氏が反映されます。
さらに、戸籍の氏が変わった後は、住民票やマイナンバーカードなどの記載も確認することになります。改姓を考えるときは、家庭裁判所への申立てだけを見れば足りるわけではなく、準備から戸籍反映後の確認までを含めた全体の流れをつかんでおくことが大切です。
改姓の申立て前に確認しておきたいこと
改姓の申立てを考えるときは、まず、自分の場合は戸籍法107条1項にもとづく氏の変更手続きの対象になるのかを確認する必要があります。また、氏の変更は本人だけにとどまらず、同じ戸籍にいる家族全員に影響します。
そのため、氏の変更を検討するにあたっては、自分のケースでは戸籍法107条1項による手続きをするのか、それとも別の手続きを考えるべきなのかを検討したうえで、現在の戸籍にいる配偶者や子供にどのような影響が及ぶのかを確認する必要があります。
改姓が問題になるのはどのような場面ですか
戸籍法107条1項による改姓が問題になるのは、戸籍に記録されている氏そのものを変更する場合です。
氏の変更が必要であっても、常に戸籍法107条1項の手続きになるわけではありません。たとえば、子の氏の変更(民法791条)を利用する場合や戸籍訂正の手続きによって処理するべき場合もあります。
また、外国人親の氏に変更しようとする場合は戸籍法107条4項が問題になりますし、このほか、配偶者が亡くなった後の復氏や離縁のように、戸籍法107条1項の申立てではなく、別の戸籍の届出や手続きによって解決できる場合もあります。
そのため、氏を変えたいと考えたときは、直ちに戸籍法107条1項の申立てのみを考えるのではなく、まず自分のケースではどの制度によって処理するべきかを検討することが大切です。手続きの方向性を誤ると、準備する書類や説明する事情、その後の進め方もずれてしまいます。
この章では一般的な改姓手続きとして戸籍法107条1項を前提に説明しますが、自分のケースがこれに当たるのか迷う場合は、戸籍の内容やこれまでの身分関係の経過を確認しながら、どの手続きが問題になるのかを見極める必要があります。
同じ戸籍にいる家族への影響と15歳以上の子がいる場合の注意点
戸籍法107条1項による氏の変更の手続きは、申立てをする本人だけに関わるものではありません。氏を変更すると、その戸籍にいる家族全員に影響するため、現在の戸籍に配偶者や子がいる場合は、その人たちへの影響もあわせて考える必要があります。
配偶者が日本人の場合は、その配偶者は必ず同じ戸籍に記録されています。そのため、日本人同士の夫婦で氏の変更をする場合は、一方だけで進める手続ではなく、筆頭者と配偶者が共同して申立てることになります。
また、同じ戸籍に15歳以上の子がいる場合は、その子についても注意が必要です。氏の変更が許可されると、その子についても戸籍上の氏が変わるため、その扱いを確認し、必要に応じて事前に分籍の手続をしたり、同意書などの準備を検討することになります。
ただし、成人した子は必要に応じて分籍をすることができますが、未成年の子は分籍をすることができません。そのため、未成年の子が同じ戸籍にいる場合は、氏の変更の影響を戸籍上切り離して考えることはできず、戸籍全体への影響を踏まえて準備を進める必要があります。
改姓の申立てに必要な書類と資料
氏の変更許可申立では、現在の戸籍全部事項証明書だけを用意すれば足りるとは限りません。ケースによっては、過去の戸籍や住民票・戸籍の附票を添付する必要があり、さらに、「やむを得ない事由」を裏付けるための証拠資料を用意しなければなりません。
どの書類や資料が必要になるかは、氏の変更を求める理由等によって異なります。そのため、申立ての前に、自分のケースでは何を提出する必要があるのかを確認しておくことが手続きをスムーズに進めるうえで重要になります。
戸籍全部事項証明書は基本となる書類です
氏の変更許可申立では、現在の戸籍全部事項証明書が必須の添付書類です。申立てをする本人の氏や本籍、現在の戸籍に記録されている配偶者や子の有無などを確認するためにも、まず現在の戸籍を用意して、内容を確認する必要があります。
特に、氏の変更は本人だけにとどまらず、同じ戸籍にいる家族全員に影響するため、現在の戸籍全部事項証明書は、申立ての前提を確認するための出発点になります。前の章で見たように、日本人の配偶者は共同して手続きをする当事者になります。
また、15歳以上の子がいる場合には、その戸籍の内容を踏まえて準備を進める必要があります。さらに、現在の戸籍全部事項証明書を確認することで、過去の戸籍を追加で集める必要がある場合なのかも検討することができます。
そのため、氏の変更許可申立の準備は、まず現在の戸籍全部事項証明書を取得し、そこから必要な書類や資料を検討していくことになります。
過去の戸籍や住民票・戸籍の附票が必要になることがあります
氏の変更許可申立では、現在の戸籍全部事項証明書が基本となりますが、それだけで足りるとは限りません。ケースによっては、過去の戸籍や住民票、戸籍の附票も提出しなければならないことがあります。
その典型例の一つが、離婚後婚氏続称をした人が婚姻前の旧姓に戻すことを希望する場合です。この場合は、少なくとも結婚直前の戸籍から現在までの戸籍のつながりを確認する必要があるため、過去の戸籍を必須とする家庭裁判所が多いです。旧姓に戻す手続きの詳しい流れや注意点については、旧姓に戻す手続きに関する記事一覧をご覧ください。
このほか、戸籍の附票が必要になることもあります。これらは、主として家庭裁判所の管轄を確定するための添付書類になります。申立てを居所でした時は、住民票上の住所を審判書に記載することを希望する場合の資料として提出を求められることがあります。
このように、過去の戸籍や住民票・戸籍の附票は、すべての申立てで一律に必要になるわけではありません。ご本人の状況に応じて、追加で準備するべきかを判断することになります。
なお、日本国外に居住している方は、戸籍の附票と管轄裁判所の確認が必要です。詳しくは、外国在住の日本人が、日本の家庭裁判所で改名・改姓の手続をする方法をご覧ください。
「やむを得ない事由」を裏付ける証拠資料はケースによって異なります
氏の変更許可申立では、「やむを得ない事由」を裏付ける証拠資料を用意する必要があります。戸籍は氏や家族関係を確認するための基本書類ですが、それだけで「やむを得ない事由」があることを証明できるわけではありません。
もっとも、過去から現在までの戸籍のつながりで事情がかなり明らかになる場合もあり、そのようなケースでは、戸籍以外の資料を求められないこともあります。
しかし、それは例外的な場合であり、申立てにあたっては、まずどのような資料で「やむを得ない事由」を裏付けるのかを考えておく必要があります。
どのような資料が必要になるかは、証明するべき「やむを得ない事由」の内容によって異なります。そのため、一律に同じ資料をそろえれば足りるわけではなく、自分のケースでは何をもって「やむを得ない事由」を示すのかを検討しなければなりません。
「やむを得ない事由」の詳しい考え方や、どのような場合にどのような資料が問題になるのかについては、次の章で説明します。
ここまで見てきた書類や資料を整理すると、次のとおりです。
| 書類・資料 | 位置づけ | 必要になる主な場面 |
|---|---|---|
| 戸籍全部事項証明書 | 基本書類 | 氏の変更許可申立の必須の添付書類 |
| 過去の戸籍 | 追加で必要になる書類 | 現在の戸籍だけでは足りない場合。たとえば、離婚後に婚氏続称をした人が婚姻前の旧姓に戻す場合など |
| 住民票・戸籍の附票 | 管轄や住所表示を確認するための書類 | 申立先の家庭裁判所の管轄を確定する場合など |
| 証拠資料 | 「やむを得ない事由」を裏付ける資料 | 「やむを得ない事由」を証明するための資料。内容はケースによって異なる |
「やむを得ない事由」と証拠はどのように考えるのか
氏の変更の許可を得るには、「やむを得ない事由」が必要になります。氏を変えたいという希望だけでは足りず、どのような事情があり、なぜ氏を変更することが必要で、それが「やむを得ない事由」であることを証明しなければなりません。
当然、事情を述べるだけでは十分ではなく、その事情を裏付ける証拠資料も必要になります。裁判所は、提出された証拠資料によって認められた事情が、「やむを得ない事由」に当たるかどうかを判断します。
そのため、申立ての前に、自分のケースではどのような事情が「やむを得ない事由」に該当するか、その事情をどのような資料で裏付けるのかを整理しておくことが重要です。
戸籍法107条1項では「やむを得ない事由」が必要です
戸籍法107条1項の手続きで家庭裁判所の許可を得るためには、「やむを得ない事由」が必要です。実際の申立書のひな形では、「やむを得ない事由」にあたる典型的な事情が例示されています。
参考:申立書のひな形で例示されている事情
- 婚姻前の氏にしたい
- 婚姻中に称していた氏にしたい
- 外国人配偶者の氏にしたい
- 外国人配偶者の通称にしたい
- 外国人の父・母の氏にしたい
- 通称として永年使用した
- 難しくて正確に読まれない
- 奇妙な氏である
もっとも、ひな形にあげられた典型的な事情に形式的に当てはまると書けば足りるわけではありません。裁判所は、本人の具体的な事情が、「やむを得ない事由」に当たるかどうかを個別に判断します。
「やむを得ない事由」の具体的な考え方や、成功例・却下例については、「氏の変更に必要なやむを得ない事由:成功と却下の事例」の記事をご覧ください。
「やむを得ない事由」を裏付ける証拠資料はケースによって異なります
「やむを得ない事由」があると述べるだけでは足りず、その事情を裏付ける証拠資料を提出します。申立書に理由を書いただけで許可されるわけではなく、裁判所に対して、その事情が実際に存在することを資料によって示さなければなりません。
もっとも、どのような証拠資料が必要になるかは、主張する「やむを得ない事由」の内容によって異なります。たとえば、過去から現在までの戸籍の記載から事情を把握しやすい場合もありますが、通称として永年使用したことを理由にする場合のように、戸籍以外の資料を幅広く準備しなければならないこともあります。
また、同じように申立書のひな形に例示されている事情であっても、どの資料で事情を示すべきかは一律ではありません。氏の変更を求める理由が異なれば、裁判所に示すべき事情も異なり、それに応じて必要になる証拠資料も変わります。
そのため、申立ての前には、自分のケースがどのような事情が「やむを得ない事由」にあたるのか、また、その事情をどの資料で裏付けるのかを対応させて準備することが重要です。
家庭裁判所への申立てから許可までの進み方
必要な書類や証拠資料を整えたら、家庭裁判所に氏の変更許可を申し立てます。氏の変更の手続きは、申立書を提出すれば直ちに許可されるものではなく、裁判所が申立書や添付資料を確認し、必要に応じて追加の説明や資料を求めながら審査が進みます。
結果として許可される場合もあれば、却下となる場合もあります。ここでは、どの家庭裁判所に申し立てるのか、申立て後にどのような審査や照会が行われるのか、そして許可・不許可の判断後にどのような流れになるのかを見ていきます。
申立ては住所地を管轄する家庭裁判所に行います
氏の変更許可申立は、原則として住所地を管轄する家庭裁判所に行います。申立ての前にどの家庭裁判所が管轄するのかを確認してください。
申立ての際には、申立書のほか、戸籍全部事項証明書などの添付書類を提出します。戸籍や住民票、戸籍の附票などの公的証明書は原本提出が原則です。一方で、「やむを得ない事由」を裏付ける証拠資料は、コピーを添付すれば十分です。
また、申立てには手数料を収入印紙で納め、あわせて裁判所との連絡のための郵便切手も準備します。切手の金額や内訳は家庭裁判所によって異なることがあるため、申立先の家庭裁判所の案内を確認しておくと安心です。
なお、住民票上の住所と現に住んでいる場所が異なる場合には、居所を基準に申し立てることも可能です。
さらに、日本国外に居住している方は、戸籍の附票と管轄裁判所の確認が必要です。詳しくは、「外国在住の日本人が、日本の家庭裁判所で改名・改姓の手続をする方法」をご覧ください。
申立て後は裁判所の審査や照会が行われます
受付後、家庭裁判所は、申立書の記載内容や添付された戸籍、証拠資料を確認します。ここでは、提出された資料によって認められる事情が、「やむを得ない事由」に当たるかどうかが審査されます。
申立書の記載や資料だけで判断することが難しい場合には、裁判所から追加の説明や資料を求められることがあります。したがって、申立ての段階でできる限り事情と証拠資料をそろえておくことが重要です。
もっとも、どのような方法で確認が行われるかは一律ではありません。書面による照会がされることもあれば、電話で連絡が来ることもあり、事情によっては面談が行われることもあります。
このように、申立て後の進み方は、家庭裁判所や担当者によって異なります。そのため、申立てをした後も裁判所からの連絡を確認し、求められた説明や資料に適切に対応していく必要があります。
許可・不許可の判断とその後の流れ
家庭裁判所は、申立書や添付資料、追加の説明などを踏まえて、氏の変更を許可するかどうかを判断します。ここでも、提出された資料や面談などによって認められた事情が、「やむを得ない事由」に当たるかどうかが審査の中心になります。
許可の判断がされた場合でも、その時点で直ちに戸籍の氏が変わるわけではありません。許可の裁判が確定した後、市区町村に氏の変更を届け出る必要があります。
一方で、審査の結果、不許可となる場合もあります。その場合は、やむを得ない事由が認められない理由が明記された審判がされます。不許可の審判に不服があるときは、高等裁判所に抗告することもできます。
なお、手続きの過程で裁判所から取下げを勧められることもあります。その場合は、なぜそのような見通しになっているのかを確認して、その後の対応を考えることになります。
このように、家庭裁判所での判断が出ても、それで手続きがすべて終わるわけではありません。許可後の届出や戸籍反映後の確認については、次の章で説明します。
許可後の氏の変更届とその後の手続き
家庭裁判所の許可が出ても、その時点で直ちに戸籍の氏が変わるわけではありません。許可の裁判が確定した後、市区町村に氏の変更届をして、はじめて戸籍の氏が変更されます。届出の際には、氏の変更届のほか、許可の審判書と確定証明書が必要になります。
氏の変更届が受理されると、戸籍に新しい氏が反映されます。ただし、届出をしたその場で直ちにすべての記録が変わるとは限らず、戸籍への反映まで一定の時間がかかります。
戸籍に新しい氏が反映された後は、新しい戸籍や住民票を取得して、記載を確認しておく必要があります。
また、戸籍や住民票が変わった後は、それで手続きがすべて終わるわけではありません。銀行口座、携帯電話、保険証券、運転免許証など、さまざまな名義変更手続きが必要になります。
氏の変更届の具体的な書き方や必要書類の詳細については、「氏の変更届の手続き|許可後に必要な書類と届書の書き方を司法書士が解説」をご覧ください。
まとめ|改姓の手続きは全体の流れを押さえることが大切です
改姓の手続きは、家庭裁判所に申立てればすぐに終わるものではありません。申立ての準備をし、「やむを得ない事由」をどのような資料で裏付けるのかを整理したうえで、家庭裁判所の審査を受け、許可後は市区町村への届出まで進める必要があります。
- 戸籍法107条1項の手続きでは、「やむを得ない事由」が必要です。
- 申立ての前に、必要書類と証拠資料を確認しておくことが重要です。
- 家庭裁判所の許可後も、氏の変更届や名義変更の手続きが続きます。
そのため、改姓を考えるときは、申立ての場面だけではなく、準備から戸籍反映後までを含めた全体の流れを見通しておくことが大切です。
改姓の手続きに関するよくある質問
氏の変更をするには、なぜ家庭裁判所の許可が必要で、氏を変えたいという希望だけでは認められないのでしょうか?
氏の変更に裁判所の許可が必要になるのは、恣意的・濫用的に氏を変更することを防止して、社会的な混乱・害悪を避けるためです。
そのため、ただ変更したいという希望だけではなく、「やむを得ない事由」が必要になります。
氏の変更の申立てには、どのような書類が必要なのでしょうか?
氏の変更許可申立では、現在の戸籍全部事項証明書が必須の書類です。これに加えて、ケースによって、過去の戸籍や戸籍の附票を求められることがあります。
また、戸籍だけでは「やむを得ない事由」を十分に示せない場合には、その事情を裏付ける証拠資料も必要になります。どの書類や資料が必要になるかは、氏の変更を求める理由や申立ての状況によって異なります。
氏の変更をすると、同じ戸籍にいる家族にはどのような影響があるのでしょうか?
氏の変更をすると、その戸籍にいる家族全員に影響します。本人だけ氏を変更して、同じ戸籍にいる配偶者や子はそのままにすることはできません。
そのため、日本人の配偶者がいる場合は共同して申立てをすることになり、同じ戸籍に子がいる場合は、その子への影響もあわせて考える必要があります。
同じ戸籍に15歳以上の子がいる場合は、何に注意すればよいのでしょうか?
同じ戸籍に15歳以上の子がいる場合は、氏の変更が許可されると戸籍上の氏が変わるため、その子の意向を裁判所が確認します。
実務的には、申立時にその子の同意書を添付し、同意が得られない場合は、分籍の手続などで対応します。
氏の変更と子の氏の変更、戸籍訂正、復氏はどう違うのでしょうか?
氏の変更は、家庭裁判所の許可を得て戸籍上の氏を変更する手続きです。
これに対して、子の氏の変更は民法791条にもとづく別の手続きで、戸籍訂正は戸籍に記録された氏の記載に誤りがある場合にこれを正す手続きです。
また、復氏は、離婚や配偶者の死亡など一定の場合に、届出などによって従前の氏に戻る場面をいいます。
氏の変更許可申立は、どこの家庭裁判所にすればよいのでしょうか?
氏の変更許可申立は、原則として住所地を管轄する家庭裁判所にします。
もっとも、住民票上の住所ではなく、現に住んでいる場所がある場合はその場所を管轄する裁判所に申し立てることができます。
日本国外に居住している場合は、日本国内の最終の住所を管轄する裁判所に申立ます。
申立てをした後は、どのような審査が行われるのでしょうか?
申立てがされると、申立書の内容や添付された戸籍、証拠資料を確認し、必要に応じて、裁判所から追加の面談・書面による説明や資料を求められます。
そのうえで提出された資料や面談などによって認められた事情が、「やむを得ない事由」に当たるかどうかが審査されます。
家庭裁判所で許可が出た後、すぐに氏は変わるのでしょうか?
いいえ、家庭裁判所で許可が出ただけでは、直ちに戸籍の氏は変わりません。許可の審判が確定した後、市区町村に氏の変更を届け出て、はじめて戸籍の氏が変更されます。
そのため、許可の審判書を受け取った後も、確定証明書の取得や氏の変更届書の用意が必要になります。