氏の変更届の手続き|許可後に必要な書類と届書の書き方を司法書士が解説

家庭裁判所で氏の変更の許可を受けた後、「次は何をすればよいのか」「すぐに役所へ届け出てよいのか」と迷う方も多いでしょう。氏の変更は、許可の審判を受けただけでは戸籍に反映されず、その後に必要な書類をそろえて市区町村へ届出をして、はじめて戸籍上の氏が変わります。

許可後の手続では、審判書の確認、確定証明書の取得、氏の変更届書の作成、届出先の確認など、実務上注意したい点がいくつかあります。記載や提出の段階で迷いやすい部分もあるため、流れを整理して確認しておくことが大切です。

この記事では、氏の変更許可後の届出手続に絞って、必要書類、届書の書き方、市区町村への提出方法、届出後に確認しておきたい点を順に解説します。

審判書の確認と確定証明書の取得

家庭裁判所から氏の変更を許可する審判書を受け取ったら、まずはその内容を確認し、届出に必要となる確定証明書を取得する段階に進みます。許可されただけでは市区町村へ届出ができるわけではなく、審判の確定を確認することが重要です。

この段階で氏名や本籍、変更後の氏の記載に誤りがないかを見落とすと、その後の届出や戸籍の記載にも影響するおそれがあります。また、確定証明書は届出に必要な書類であるため、取得の時期や方法もあわせて確認しておく必要があります。

この章では、審判書を受け取った後に確認するべき点と、確定証明書を取得するまでの流れを順に整理します。

審判書が届いたら確認すること

氏の変更許可の審判書を受け取ったら、まずは主文の内容を確認します。ここで最も重要なのは、変更後の氏と氏の振り仮名の記載です。

戸籍は、原則として審判書に記載された氏及び氏の振り仮名のとおりにしか変更することができないため、この部分に誤りがあると、届出をしても希望した内容をそのまま戸籍に反映させることができません。

変更後の氏及びその振り仮名の他に、申立人の氏名、本籍の表示を確認することも重要です。変更後の氏及びその振り仮名はもちろん、申立人の表示に誤りがある場合も、市区町村での受付に支障が生じるおそれがあります。なお、住所については住民票のない居所でも、裁判所が受付をするので、実務上は大きな問題になりません。

審判書には、事件番号や裁判所名、裁判官名、手続費用に関する定型的な記載もありますが、届出との関係で特に重要なのは、申立人の表示と主文の部分です。主文には、どの氏をどの氏に変更するのか、また氏の振り仮名をどのように変更するのかが記載されていますので、この部分を最も注意して確認してください。

万が一、変更後の氏及びその振り仮名の表示や申立人の本籍・氏名等に誤記がある場合は、そのまま届出を進めず、速やかに裁判所に連絡するべきです。申立書や添付書類から明らかに誤りであることが分かる場合には、裁判所の職権で更正の対応がされることがあります。

確定証明書の取得方法

氏の変更を許可する審判書を受け取っても、すぐに市区町村へ氏の変更を届け出ることはできません。許可の審判には不服を申し立てるための期間があるため、審判書を受け取ってから一定期間は、まだ審判が確定していない状態にあります。

このため、氏の変更届をするには、審判書だけでなく、その審判が確定したことを証明する「確定証明書」も必要になります。届出の前提として、審判書の内容を確認した後は、この確定証明書を取得する段階に進みます。

確定証明書は、裁判所に申請して発行してもらいます。通常は、審判書の受取時に申請書に記入するか、審判書に同封された申請書を使って申請します。手数料150円は、収入印紙で納めることになります。

確定後に裁判所から郵送で受け取ることが一般的です。届出を急ぎたい場合は、速達郵便分の切手を添えたり、裁判所に取りに行くことを申し出ることもお勧めです。

届出前に確認しておきたい点

審判書の内容を確認し、確定証明書を取得したら、次は市区町村への届出に進むことになります。ただし、届出の直前になって書類や届出先を確認し始めると、手続が止まってしまうことがあります。そのため、届書の作成に入る前の段階で、必要書類と届出先を一度整理しておくことが大切です。

まず確認しておきたいのは、届出に使う書類がそろっているかどうかです。氏の変更許可の審判書の謄本及び確定証明書は、届出の前提になる書類です。

また、以前は本籍地以外の市区町村に戸籍届を提出する場合に、現在の戸籍の添付が必要でしたが、令和6年3月1日以降は、戸籍届出時の戸籍の添付が原則不要とされています。ただし、コンピューター化されていない戸籍では例外がありますので、不安がある場合は、法務省の案内を確認し、提出先の市区町村に問い合わせておくと安心です。

そのうえで、実際にどこの市区町村へ届け出るのか、窓口へ持参するのか郵送で送るのかも、あらかじめ決めておくと、その後の作業が進めやすくなります。

氏の変更届書の作成

審判書と確定証明書を確認したら、次は氏の変更届書を作成します。氏の変更届書は全国共通の様式ですが、どの欄に何を記載するのかが分かりにくく、記入方法で迷いやすい部分もあります。

また、届書は単に氏名を書けば足りるものではなく、届出の日付や宛先、申立人の表示、同じ戸籍にある人の欄、その他の欄など、それぞれ確認しながら記入する必要があります。記載内容に誤りがあると、氏の変更が戸籍に反映されるまでに時間がかかることもあります。

この章では、氏の変更届書の入手方法から、各欄の基本的な書き方までを順に整理します。

氏の変更届書の入手方法と記入前の確認

氏の変更届書の全体
氏の変更届書の全体の画像

氏の変更届書は全国共通の様式で、市区町村の戸籍窓口で入手することができます。ただし、出張所やサービスコーナーには置かれていないこともあります。

また、自治体によっては届書のPDFを公開していることがあります。たとえば、札幌市の氏の変更届書のPDFを参考にすると、届書全体の構成を事前に確認することができます。

氏の変更届の届書PDF(札幌市)
札幌市の氏の変更届書(PDF)

届書を書き始める前には、審判書と確定証明書を手元に用意し、すぐ確認できる状態にしておくことが重要です。届書はこれらの内容を前提に記入することになるので、確認しながら正確に記入できるように準備しておくと、記載ミスや手戻りを防ぎやすくなります。

届出の日付と宛先の書き方

氏の変更届の日付と宛先の欄
届出の日付と宛先の欄

氏の変更届書の最初に記入するのは、届出の日付と宛先です。ここには、実際に届出をする日と、届出先となる市区町村長を記入します。

日付は、窓口に持参する場合は提出日を記入すれば足ります。あらかじめ記入しておいても大きな問題になりませんし、空欄のまま郵送しても問題ありません。

宛先に記入するのは、本籍地の市区町村長とは限りません。ここで記入するのは、あくまで実際に届書を提出する窓口の市区町村長です。たとえば、本籍地が福岡市で、住所地である千代田区役所に届け出るのであれば、宛先は「千代田区長」と記入します。

また、日本国外に在住している場合は、領事館に届け出ることもできます。

届出をする本人の表示の書き方

氏の変更届の本人の表示の欄
届出をする本人の表示の欄

この欄は、どの戸籍の氏をどのように変更するかを明確にするために、現在の戸籍の情報、変更前後の氏及び振り仮名、許可の審判が確定した日付を記入する欄です。

最初の行には、届出をする戸籍の情報を記入します。ここには、届出の時点の戸籍のとおりに記入する欄ですので、変更後の氏ではなく、現在の戸籍のとおり記入してください。

次に、「氏」の欄には、変更前の氏と変更後の氏を記入します。左側には現在の戸籍上の氏及びその振り仮名を、右側には審判書に記載されたとおりの変更後の氏及びその振り仮名を記入します。この部分は審判書の主文どおりに記入する必要がありますので、漢字や振り仮名を正確に転記することが大切です。

なお、2026年5月26日以前で戸籍に振り仮名が反映されていない場合や、26日以降も振り仮名が自動的に反映されていない場合は、変更前の振り仮名を記入する必要はありません。

また、「許可の審判」の欄には、確定証明書に記載された確定の日付を記入します。審判書に記載された日付ではなく、確定証明書で確認した日付を書くことになりますので、書き間違えないように注意してください。

この欄は、審判書と確定証明書を見ながら記入すれば足りますが、思わぬ誤記を避けるため、手元の書類を確認しながら、一つずつ落ち着いて記入するのがよいでしょう。

同じ戸籍にある人の欄の書き方

氏の変更届の同じ戸籍にある人の欄
同じ戸籍にある人の欄

この欄は、氏の変更をする戸籍の中に、届出人以外に誰が記録されているのかを記入する欄です。具体的には、同じ戸籍にある配偶者や子供の氏名及び住所を記入します。

ここで注意したいのは、「同じ戸籍にある人」を書く欄であって、親族一般を記入する欄ではないという点です。既に婚姻や分籍などで別の戸籍に移っている人は、この欄には記入しません。

また、ここに記入する住所は実際に住んでいる場所ではなく、住民票に記載されている住所を記入するので、戸籍の附票などで確認すると安心です。なお、同じ住所の場合は「同上」と記入しても問題になりません。

あくまで、ここに記入する住所は市区町村が把握している住所ですので、住民票が抹消されていたり、外国に住んでいる場合は窓口で確認してください。

この欄も、現在の戸籍や住民票又は住民票を見ながら記入すれば十分で、手元の資料を確認しながら、同じ戸籍にある人を一人ずつ整理して記入するのがよいでしょう。

その他欄と届出人署名欄の書き方

氏の変更届のその他欄と届出人署名欄
その他欄と届出人署名欄

この部分には、「その他」の欄と届出人の署名欄があります。「その他」の欄は、記入しなければならないわけではありませんが、子供がいる場合に、子供の戸籍の父母の氏名を変更する場合は、ここにその旨を記入する必要があります。

同じ戸籍にいる子については、「その他」の欄で特に触れなくても、子供の父母欄の氏名が変更されることもありますが、厳格な市区町村ではその旨を記入しなければならない扱いになっているので、記入しておくべきです。

実際の記載としては、「同籍の子〇〇の父母の氏を変更してください」と記入すれば十分です。結婚などにより別の戸籍にいる子については、「本籍東京都▲▲区□□一丁目100番、筆頭者〇〇の戸籍にいる子〇〇の父母の氏も変更してください」と記入します。

「届出人の署名欄」には、筆頭者と配偶者が署名し、生年月日を記入します。ここで注意したいのは、まだ戸籍上の氏は変更されていない段階で届出をするという点です。そのため、署名は変更後の氏ではなく、届出時点の戸籍上の氏名で行います。

以前の様式には連絡先電話番号を記入する欄がありましたが、最近の様式では見当たらないことがあります。ただし、手続中の連絡に備えて、必要に応じて枠外に電話番号を書き添えておくとよいでしょう。

市区町村への届出

氏の変更届書の作成が終わったら、市区町村への届出に進みます。届出は、届書を書くだけで完了するものではなく、提出先や提出方法、添付書類を確認したうえで行う必要があります。

この章では、どこの市区町村に提出するのか、どのような方法で提出するのか、また提出時に必要となる書類について順に確認します。

どこの市区町村に提出するか

氏の変更届は、本籍地の市区町村だけでなく、届出人の所在地の市区町村にも提出することができます。所在地には、住民票のある住所地だけでなく、一時的な居所が含まれる扱いもあります。

そのため、どこに提出するかは、本籍地にするのか、実際に手続をしやすい住所地や居所にするのかを先に決めれば足ります。届書の宛先欄には、実際に提出する市区町村長を記入することになりますので、提出先を決めてから届書を書き始める方が分かりやすいでしょう。

また、日本国外に住んでいる場合は、在外公館に届け出ることもできます。ただし、在外公館を経由する場合は、日本の市区町村に届書等を送ることになるため、戸籍に反映されるまでに時間がかかることがあります。状況によっては、直接市区町村に送ることを検討してもよいでしょう。

必要書類と提出方法

氏の変更届を提出する際には、氏の変更届書、家庭裁判所の氏の変更許可の審判書及び確定証明書を用意します。

また、マイナンバーカードを持っている場合は、氏の変更にあわせてカードの記載事項の変更が必要になります。そのため、窓口であわせて手続を進めるのであれば、持参しておくとよいでしょう。

提出方法は、窓口に持参する方法が基本です。もっとも、実際に窓口へ届書を持参するのは、必ずしも届出人本人である必要はなく、記載済みの届書を親族などの使者が提出することもできます。

窓口で提出する場合は、その場で形式的な確認を受けることができるため、不明点があるときはその場で確認しやすいという利点があります。反対に、郵送で提出する場合は、補正や確認が必要になったときにやり取りに時間がかかることがありますので、急ぐ場合は窓口提出の方が進めやすいことがあります。

届出後の戸籍反映と確認

市区町村に氏の変更届を提出すると、受理後に戸籍へ新しい氏が反映されます。ただし、届出をしただけでその場で戸籍が直ちに変わるわけではなく、反映までには一定の時間がかかります。

この章では、戸籍に反映されるまでの流れと、反映後に確認しておきたい点を順に整理します。

戸籍に反映されるまでの流れ

氏の変更届が市区町村に受理されると、その内容にもとづいて戸籍の記載が進められます。ただし、受理されたその場で直ちに新しい戸籍ができあがるわけではなく、戸籍に反映されるまでには一定の時間がかかります。

本籍地の市区町村に届け出た場合は、その市区町村で戸籍の記載がされます。他方で、本籍地以外の市区町村に届け出た場合は、受理をした市区町村から本籍地の市区町村へ届書等が送られ、その後に本籍地で戸籍の記載がされることになります。

そのため、本籍地以外に届け出た場合の方が、戸籍への反映までに時間がかかることがあります。さらに、日本国外から在外公館を通じて届け出た場合は、日本の市区町村へ書類が送られるまでに時間を要することがあります。

戸籍に反映されるまでの期間は、市区町村の事務処理の状況によって異なりますが、届出後すぐに新しい戸籍が取れるとは限りません。急いで戸籍証明書や住民票を取り直すのではなく、数日からしばらく時間をおいて確認する方が確実です。

新しい戸籍の確認ポイント

氏の変更が戸籍に反映された後は、新しい戸籍証明書を取得して内容を確認します。氏の変更後の各種手続きで戸籍が必要になるので、反映後の戸籍を取得した際に誤りがないかを確認するのが確実です。

まず確認したいのは、戸籍の筆頭者の欄です。この欄では、筆頭者の氏名及びその振り仮名が、変更後の内容に書き換えられます。審判書に記載された変更後の氏及びその振り仮名のとおりに記録されているかを確認してください。

次に確認したいのは、戸籍証明書の本籍及び筆頭者の欄の後に記録される氏の変更の記載です。ここには、氏の変更をした旨、氏の変更届出の日付、従前の氏及びその振り仮名などが記録されます。

このうち、届出の日付に誤りがあっても、実務上大きな支障が生じる場面はほとんどありません。しかし、従前の氏の記録に誤りがあると、過去の追跡や変更前後の氏のつながりが確認しづらくなるので、特に注意して確認するべきです。

万が一、変更後の氏や振り仮名に誤りがある場合や、記載に不自然な点がある場合は、そのままにせず、市区町村に確認してください。戸籍の記載は、その後の住民票、本人確認書類、各種名義変更の前提になるため、最初の段階で確認しておくことが大切です。

まとめ

氏の変更は、家庭裁判所の許可を受けただけでは戸籍に反映されません。許可後は、審判書の内容を確認し、確定証明書を取得したうえで、市区町村へ氏の変更を届け出る必要があります。

届出の段階では、変更後の氏及びその振り仮名を審判書どおりに記載すること、届出先に応じて宛先を正しく記入すること、必要に応じて子供の戸籍の父母欄の氏名変更についてその他欄に記載することなどが実務上のポイントになります。

また、市区町村に届出をした後も、その場で直ちに戸籍が書き変わるわけではありません。戸籍に反映された後は、新しい戸籍証明書を取得し、筆頭者の氏及びその振り仮名、氏の変更の記録、従前の氏の記載などに誤りがないかを確認しておくことが大切です。

氏の変更届は、許可後の最後の手続ですが、その後の戸籍や各種名義変更の前提になる重要な段階でもあります。審判書、確定証明書、届書の内容を一つずつ確認しながら、落ち着いて進めることが大切です。

よくある質問

氏の変更届には、確定証明書が必ず必要ですか?

確定証明書は必要です。氏の変更届は、審判書だけではなく、許可が確定したことを示す確定証明書もそろえて提出することになります。したがって、審判書を受け取った後、確定証明書を取得してから市区町村へ届け出ます。

氏の変更届は、どこの市区町村に出せますか?本籍地以外でもよいのでしょうか?

はい。本籍地以外でも届け出ることができます。氏の変更届は、本籍地の市区町村のほか、届出人の所在地の市区町村にも提出できます。所在地には、住民票のある住所地だけでなく、一時的な居所が含まれる扱いです。日本国外に住んでいる場合は、在外公館に届け出ることもできます。

氏の変更届は、郵送で提出することもできますか?

はい、郵送で提出できます。もっとも、郵送では補正の連絡などに時間がかかることがあるため、急ぐ場合は窓口提出の方が進めやすいでしょう。

氏の変更届の署名は、変更前の氏名と変更後の氏名のどちらで書けばよいのでしょうか?

変更前の戸籍上の氏名で署名します。氏の変更届では届出人本人が変更前の氏名で自署することが求められています。

氏の変更届を出した後、戸籍にはどれくらいで反映されますか?

戸籍に反映されるまでの期間は市区町村によって異なりますが、届出当日に新しい戸籍証明書が取れるわけではありません。一般的には数日から10日程度かかり、本籍地以外に届け出た場合は通常より数日長くなることがあります。お急ぎであれば、提出先又は本籍地の市区町村に確認するのが確実です。

氏の変更後、子供の戸籍の父母欄の氏名も自動的に直してもらえるのでしょうか?

一律に自動的に変更されるとは限りません。子供の戸籍の父母欄の氏名も変更したいときは、氏の変更届の「その他」欄にその旨を記載しておくのが安全です。取扱いに迷う場合は、市区町村の戸籍窓口に確認しておくとよいでしょう。

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