氏の変更をするには、氏の変更許可申立書を作成して、家庭裁判所に申し立てる必要があります。氏の変更許可申立書の書き方では、申立人や住所・本籍などの基本事項だけでなく、「申立ての理由」をどのように記載するかが重要になります。
とくに、氏の変更許可申立書では、氏を変更したい事情をそのまま並べるのではなく、経緯、現在の支障、変更の必要性が伝わるように整理することが大切です。また、申立書の記載内容と添付資料の内容が対応しているかも、作成前に確認しておきたいポイントです。
氏の変更の手続全体の流れや、申立てから届出までの全体像を先に確認したい方は、氏の変更の手続全体を解説した記事をご覧ください。
この記事では、氏の変更許可申立書を作成する前に確認しておきたい事項を踏まえながら、家庭裁判所に提出する申立書の各欄の書き方と、申立ての理由の整理方法を解説します。個別の事情に応じた詳しい書き方や、許可後の届出については関連記事をご覧ください。
氏の変更許可申立書を作成する前に確認しておきたいこと
氏の変更許可申立書を作成するにあたって、書式の形式に沿って書き進める前に、申立ての理由として整理するべき事情と、その事情がどの資料から読み取れるのかを確認しておくことが重要です。とくに、氏の変更を希望する事情をそのまま列挙するだけでは、申立ての理由として伝わりにくくなることがあります。
申立書の作成に入る前に、どのような事実を理由として整理するのか、また、その事実がどの資料から読み取れるのかを確認しておくことで、その後の記載もしやすくなります。ここでは、申立書作成前に確認しておきたい基本的なポイントを解説します。
申立ての理由として整理するべき事情を確認する
氏の変更許可申立書を作成する前に、まず確認しておきたいのは、どのような事情を申立ての理由として整理するのかという点です。
氏を変更したいと思うに至った事情が複数ある場合でも、そのすべてをそのまま並べればよいわけではなく、申立ての理由として位置づけるべき事実を整理しておく必要があります。
とくに意識したいのは、どのような経緯で氏の変更を考えるに至ったのか、現在どのような不都合や支障が生じているのか、そして、そのために氏の変更が必要だと考える理由は何か、という流れです。
こうした点をあらかじめ整理しておくことで、その後に「申立ての理由」を記載するときも、内容が散らかりにくくなります。
もっとも、申立書に書く事情であれば何でも同じように扱われるわけではありません。氏の変更許可では「やむを得ない事由」が必要になるため、どのような事情がその理由として評価されるのかを意識して整理することが大切です。やむを得ない事由の考え方や、実際に問題になりやすい事情については、氏の変更に必要なやむを得ない事由を解説した記事もあわせてご覧ください。
申立書の作成前には、出来事や心情を漫然と並べるのではなく、「やむを得ない事由」に該当する事情として位置づけるべき事実を整理しておくことが重要です。どの事情を中心に記載するのかが定まっていないと、申立書全体の記載も不安定になりやすくなります。
申立ての理由を裏付ける資料があるかを確認する
申立ての理由として整理するべき事情が見えてきたら、次に、その事情がどの資料から読み取れるのかを確認します。氏の変更許可申立書では、事情を文章にするだけでなく、その記載内容がどの資料に基づいているのかを意識しておくことが大切です。
申立てにあたっては戸籍謄本などの添付書面が必要になりますが、それに加えて、申立ての理由として整理した事情について、どの資料が根拠になるのかを見ておくことが重要です。資料によって、申立書の組み立て方も変わってきます。
もっとも、申立ての理由となる事情のすべてが、資料からそのまま読み取れるとは限りません。そのため、どの事情が資料から読み取れるのか、どの事情を申立書の記載の中で補って説明するのかを整理しておくことが重要です。
また、通称を理由にする場合には、その使用状況が分かる資料が重要になります。他方で、それ以外の場合には、そのような資料は事情を補う材料にとどまることもあります。一方で、事情(例えば旧姓に戻す場合や外国人配偶者又は親の氏に変更する場合)によっては、戸籍のみで十分な裏付け資料になることもあります。
申立書を作成する前の段階で、どの事情にどの資料が対応するのかを確認しておけば、その後の「申立ての理由」の記載や、添付書類欄の整理もしやすくなります。
氏の変更許可申立書の各欄の書き方
申立ての理由として整理するべき事情と、それを補う資料を確認したら、次に、氏の変更許可申立書の各欄を見ていきます。申立書の書式は裁判所のページで確認することができます。
ダウンロードした書式を手元で確認しながら読むと、各欄の意味や記載の流れが分かりやすいでしょう。
氏の変更許可申立書には、管轄、申立人の表示、「申立ての趣旨」、「申立ての理由」、添付書類欄などの記載欄があります。これらの欄は、それぞれ記載の目的が異なるため、欄ごとの役割を意識して書き分けることが重要です。ここでは、各欄の基本的な見方と書き方を順に確認します。
管轄・日付・署名などの欄の書き方
申立書の冒頭には、申立先の家庭裁判所、申立日、申立人の記名押印など、申立ての基本情報を記載する欄があります。
家庭裁判所の欄には、申立先となる家庭裁判所を記載します。どの家庭裁判所が管轄になるかは原則住所地によって決まるため、あらかじめお住まいの地域の家庭裁判所のホームページを確認したり、窓口に電話をしたりして、管轄を確認しておくとよいでしょう。
日付欄には、申立書を家庭裁判所に提出する日を記載します。作成日ではなく、実際の提出日を基準に記載するのが通常です。
申立人欄には、申立てをする本人が記名押印します。もっとも、15歳未満の場合には、画像にもあるとおり、法定代理人である親権者が記名押印することになります。父母双方が親権者であれば、両人が署名押印しなければなりません。
記載方法については、実際に使用する書式や裁判所の案内も確認しながら進めると安心です。まずは、この欄では「どの裁判所に、誰の名で、いつ申し立てるのか」を正確に示すことが大切です。
添付書類欄の書き方
添付書類欄には、申立てにあたって家庭裁判所へ提出する書類を記載します。
氏の変更許可の申立てでは、申立人の戸籍謄本や、「やむを得ない事由」を証する資料が基本的な添付書面になります。また、同じ戸籍にいる15歳以上の者がいる場合には、その同意書も添付書類になります。さらに、状況によっては住民票などの提出が必要になることもあります。
添付書類欄には、実際に提出する書類とその数を記入します。「やむを得ない事由」を裏付ける資料については、「やむを得ない事由を証する資料 各1通」とまとめて記入することもあります。
申立人欄・本籍・住所・氏名の書き方
申立人欄には、氏の変更を求める本人について、本籍、住所、氏名、生年月日などの基本情報を記載します。ここは手続の対象となる人を特定するための欄ですので、戸籍や住民票に記載されているとおりに正確に記載することが大切です。
本籍や氏名は戸籍の記載に沿って記入し、住所は現在の住所を記載します。普段使用している通称や旧姓があっても、この欄では戸籍上又は住民票上の表示を基準に記載するのが基本です。
申立人が15歳未満の場合は、下段の法定代理人の欄に親権者の情報を記入します。住所や本籍が申立人と同じであれば、「同上」や「申立人と同じ」と記入することも可能です。
「申立ての趣旨」の書き方
「申立ての趣旨」の欄は、申立てによってどのような変更を求めるのかを定型文に沿って記載する欄です。裁判所の書式では、変更前の氏と変更後の氏を、それぞれかっこ内に記入する形式になっています。
あわせて、氏の振り仮名も記入する形式になっています。ここでは、変更後の振り仮名だけでなく、変更前の振り仮名も記載する欄がありますが、戸籍に氏の振り仮名が反映されていない場合は、変更前の振り仮名欄は空欄にします。
また、振り仮名はカタカナで戸籍に記録されるため、申立書にもカタカナで記入します。普段ひらがなで認識している読み方であっても、この欄ではカタカナで記載することになります。
ただし、変更後の振り仮名は自由に選択できるわけではありません。特に旧姓に戻すための氏の変更の場合は、変更後の振り仮名は両親の氏の振り仮名と同じでなければなりません。
「申立ての理由」の記載欄の見方
「申立ての理由」の欄は、上段の典型例の欄と、下段の具体的な事情の欄に分かれています。まずは、どの欄に何を書くのかを確認しておきましょう。
上段には、申立ての理由に関する典型的な事情があらかじめあげられており、申立ての理由として近いものがあれば、それを〇で囲んで選択することになります。どれにも当てはまらない場合は、「その他」に〇をして、「以下のとおり」とかっこ内に記入するとよいでしょう。
この上段は申立ての理由の類型を示す欄にすぎず、それだけで理由の説明が尽くされるわけではありません。実際にどのような事情があり、なぜ氏の変更が必要なのかは、下段で具体的に記載することになります。
下段は、申立人の個別具体的な事情を記載する欄です。氏を変更したいと考えるに至った経緯、現在生じている不都合や支障、氏の変更を必要とする理由などを、時系列に沿って、具体的に記入していきます。内容を裏付ける資料がある場合は、その資料から読み取れる内容に即して事情を整理し、必要に応じて資料にも触れておくとよいでしょう。
このように、「申立ての理由」の記載欄は、典型例の選択と、具体的事情の説明という二つの要素で構成されています。次の章では、この具体的事情をどのように書くべきかを中心に見ていきます。
「申立人と同一戸籍内の15歳以上の者」の欄
申立人と同じ戸籍に15歳以上の者がいる場合に、その者の氏名、住所、年齢などをこの欄に記入します。
氏の変更が許可されると、同じ戸籍にいる者全員の氏や氏の振り仮名にも影響するため、15歳以上の者が同じ戸籍にいる場合には同意書の提出が問題になります。裁判所の案内でも、同一戸籍内にある15歳以上の者の同意書は、標準的な申立添付書類の一つとされています。
ただし、同意書がないからといって、直ちに手続が進まなくなるわけではありませんし、許可ができなくなるわけでもありません。しかし、同意書がない場合には、15歳以上の同籍者に対して裁判所から連絡が行くことがあります。
そのため、この欄に記載する者がいる場合には、同意の有無や、あらかじめ同意書を求めることが実務上は重要です。もっとも、同一戸籍に15歳以上の者がいない場合には、この欄や同意書は問題になりません。
申立書を作成する際には、現在の戸籍を確認して、該当する同籍者がいるかどうかをあらかじめ整理しておきましょう。
「申立ての理由」はどのように書くべきか
「申立ての理由」の下段は、申立人の個別具体的な事情を記載する欄です。上段の典型例を選択するだけでは申立ての理由の説明として足りないため、この欄で、どのような事情があり、なぜ氏の変更を求めるのかを具体的に記載することになります。
この欄では、単に希望を述べるのではなく、経緯、現在の支障、変更の必要性が伝わるように事情を整理して書くことが重要です。ここでは、その具体的な書き方のポイントを確認していきます。なお、氏の変更の理由として問題になりやすい事情や、「やむを得ない事由」の考え方については、氏の変更に必要なやむを得ない事由を解説した記事もあわせてご覧ください。
経緯・現在の支障・変更の必要性を整理して書く
「申立ての理由」を書くときは、思いついた事情をそのまま並べるのではなく、経緯、現在の支障、変更の必要性という順で整理して書くと、内容が伝わりやすくなります。
まず、どのような経緯で現在の氏を使用することになったのか、又は、どのような経緯で氏の変更を考えるに至ったのかを簡潔に示します。そのうえで、現在の氏のままでいることによって、どのような不都合や支障が生じているのかを記載します。
その後に、なぜ氏の変更が必要なのかを記載すると、単に事情を述べるだけでなく、「現在の支障があるため、氏の変更を求める」という流れが明確になります。申立書では、このつながりが分かるように記載することが重要です。
たとえば、過去の出来事だけを詳しく書いて現在の支障に触れていなかったり、反対に現在困っていることだけを書いて、その事情に至った経緯が分からなかったりすると、申立ての理由全体が伝わりにくくなります。経緯、現在の支障、変更の必要性を一続きのものとして整理して記載していきましょう。
感情的な説明だけで終わらせない
氏を変更したいと考える背景には、違和感、不快感、不安、負担感など、さまざまな気持ちがあることも多いでしょう。しかし、「つらい」「嫌だ」「しっくりこない」といった感情だけを述べても、許可を得ることはできません。
申立書では、そのような気持ちがどのような事情から生じているのか、また、その結果として社会生活の中でどのような支障が生じているのかを、具体的に示す必要があります。感情を記載する場合でも、それ自体を中心に据えるのではなく、客観的な事情や現実の支障との関係で整理して記載しなければなりません。
そのため、違和感や不快感があるという気持ちを具体的な事情と結び付けて記載したとしても、それだけで許可が認められることは通常ありません。申立書では、感情そのものを中心に書くのではなく、社会生活の中でどのような支障が生じているのか、そして、その支障との関係でなぜ氏の変更が必要なのかが伝わるように整理することが重要です。
感情的な説明を完全に排除する必要はありませんが、申立書では、気持ちそのものよりも、その背景にある事情と、氏の変更を必要とする具体的な理由が伝わるように整理して書くことが大切です。
添付資料と整合する内容にする
「申立ての理由」を記載するときは、添付資料から読み取れる内容に即して整理することが重要です。
申立書に書かれている事情と、実際に提出する資料の内容が食い違っていると、疑問を生じさせ、追加の資料や釈明を求められるでしょう。
たとえば、通称を継続的に使用していることを理由の一つにするのであれば、その使用状況が分かる資料と対応するように記載しておく方が分かりやすくなります。また、戸籍の記載から経緯が読み取れる場合には、その内容と矛盾しないように理由欄を整える必要があります。
ただし、申立ての理由となる事情のすべてについて資料があるとは限りません。そのため、資料がある事情については資料と対応するように書き、資料がないときは、経緯や支障の内容が伝わるように、申立書の中で丁寧に説明することが大切です。
資料の内容をそのまま書き写す必要はありませんが、どの事情をどの資料で補っているのかが分かるようにしておくと、申立書全体が整理されます。理由欄を書く前に整理した事情と資料の対応関係を、ここでも意識しておきましょう。
氏の変更許可申立書を作成するときの注意点
ここまで見てきたとおり、「申立ての理由」は、経緯、現在の支障、変更の必要性を整理し、添付資料との対応関係も意識しながら記載していくことが重要です。
実際に申立書の作成を始めると、事情を抽象的に書きすぎたり、反対に事情を書き込みすぎて論点が散らかったり、資料との整合が取れなくなったりすることがあります。
ここでは、書き方や整理の仕方でとくに注意しておきたい点を確認していきます。
理由が抽象的すぎる書き方になっていないか
「申立ての理由」を記載するときに多いのが、事情を抽象的に書きすぎてしまうことです。たとえば、「やむを得ない事由」があると述べるだけでは足りません。
申立書では、そのような抽象的な言葉や評価・感想だけではなく、事情の重みや現実の不都合を説明して「やむを得ない事由」があることを伝えなければなりません。
「不便である」「支障がある」「違和感がある」といった表現だけではなく、どのような経緯があり、現在どのような支障が生じているのかを具体的に示して、なぜ「やむを得ない事由」にあたるのかを、その理由となる事実や支障の内容まで記載してはじめて、申立ての理由として意味を持ちます。
また、裁判例の文言や要旨をそのまま引用するだけでは、申立人自身の事情を説明したことにはなりません。裁判例は参考にはなりますが、申立書では、なぜ自分の事案で「やむを得ない事由」があるといえるのかを、具体的事実に即して記載する必要があります。
事情を簡潔にまとめることは大切ですが、簡潔にしすぎて内容が空疎にならないよう注意が必要です。申立書では、抽象的な評価語ではなく、実際の経緯や支障が伝わるように注意しましょう。
事情を書きすぎて論点が分散していないか
「申立ての理由」では、事情をできるだけ多く書いた方がよいとは限りません。関係する出来事や気持ちをすべて盛り込もうとすると、かえって何が中心的な理由なのかが分かりにくくなることがあります。
とくに、氏の変更を考えるに至るまでには、家族関係、仕事上の事情、日常生活での不都合など、さまざまな背景があることがあります。しかし、それらを同じ重みで並べてしまうと、申立書全体の論点が散らかり、「なぜ氏の変更が必要なのか」という核心が見えにくくなります。
申立書では、まずやむを得ない事由の中心となる事情を定め、その事情を軸にして、経緯、現在の支障、変更の必要性を組み立てることが大切です。補足的な事情を書く場合も、中心となる理由との関係が分かるように整理して記載するべきです。
しかし、すべての事情が同じ重みで評価されるわけではありません。やむを得ない事由の中心となる事情には足りないものであっても、中心事情を補う事情として意味を持つことがあります。たとえば、それだけではやむを得ない事由を基礎づけるには弱い事情であっても、中心事情との関係で補強的に位置づけられることがあります。他方で、そのような事情も、中心となる理由との関係が明らかでなければ、単なる事情の羅列にとどまります。
事情を丁寧に説明することと、事情を書き込みすぎることは別です。伝えるべき事実を絞り込み、申立ての理由の軸がぶれないように記載していきましょう。
申立書の記載と資料の内容が食い違っていないか
申立書に記載した事情は、添付資料の内容と整合していなければなりません。また、添付資料同士の内容にずれがある場合にも、申立て全体に疑問が生じ、追加の資料や釈明を求められることがあります。
申立書の記載は、添付資料と切り離して作成するものではなく、戸籍や通称使用の資料などから読み取れる内容を踏まえて、経緯や事情、現在の支障、変更の必要性を整理して記載していくことが重要です。
たとえば、戸籍から明らかになる経緯と申立書の説明が一致していない場合や、通称使用を理由の一つにしているのに、その使用状況を示す資料と記載内容が対応していない場合には、申立書全体の説得力が弱くなります。
もちろん、資料に書かれている内容をそのまま申立書に書き写す必要はありません。しかし、申立書の記載は、添付資料から読み取れる内容にもとづいて組み立てられている必要があります。
申立書を書くときは、事情だけを思い出しながら書くのではなく、戸籍やそのほかの資料を見ながら、その内容に即して記載を整理していきましょう。その際には、申立書と資料との整合だけでなく、資料同士の内容にも食い違いがないかを確認しておくことが大切です。
申立書を提出する前に確認したいポイント
氏の変更許可申立書は、申立ての理由を適切に整理して記載することが重要ですが、提出前には形式面の確認も欠かせません。記載漏れや誤記がないか、添付書類や申立手数料等の準備に不足がないかを、あらためて確認しておく必要があります。
申立書の内容に問題がなくても、形式的な不備や添付書類の不足があると、補正や追完を求められることがあります。また、その場で受け付けてもらえず、一度持ち帰って必要な書類等をそろえた上で、あらためて提出することになる場合もあります。ここでは、家庭裁判所に提出する前に確認しておきたい点を見ていきます。
記載漏れや誤記がないか、日付・署名欄も確認する
申立書を提出する前には、まず各欄に記載漏れや誤記がないかを確認します。本籍、住所、氏名、生年月日などの基本情報に誤りがあると、訂正を求められることがあるため、しっかり確認しておきましょう。
とくに見落としやすいのが、日付欄や署名欄です。日付は提出日を基準に記載し、署名は変更後の氏ではなく、申立ての時点における氏名、すなわち変更前の氏名で行います。
申立人が15歳未満の場合は、署名欄には法定代理人全員が署名押印します。この場合は、「申立人(子供の氏名)、親権者代理人父(署名)、親権者代理人母(署名)」のように記載すると、より分かりやすいでしょう。
管轄・添付書類・申立手数料などを確認する
申立書の記載が整ったら、最後に家庭裁判所に提出する前に、どの書類を添付するのか、申立手数料等に不足がないかを確認します。内容面に問題がなくても、提出先や添付書類に誤りがあると、その場で受け付けてもらえないこともあります。
管轄は原則として住所地によって決まるため、あらかじめ申立先となる家庭裁判所を確認しておく必要があります。添付書類についても、戸籍謄本、同意書、「やむを得ない事由」を証する資料など、実際に提出するものがそろっているかを見直しておきましょう。
申立手数料の収入印紙や予納郵券(切手)は、裁判所の庁舎内で購入できることもありますが、小規模な裁判所では購入できないことも少なくありません。そのため、当日その場で準備すればよいと考えず、あらかじめ必要額や購入方法を確認して、郵便局で用意しておく方が安心です。
なお、戸籍謄本等について原本の返却を希望する場合は、写しの提出などが必要になることがあります。また、戸籍や同意書等を除く「やむを得ない事由」を証する資料についても、原本ではなく写しを提出することを前提に準備しておくとよいでしょう。提出方法の細かな取扱いも含めて、申立先の家庭裁判所の案内を確認しておくと安心です。参考として、家庭裁判所の手続案内PDFも確認できます。
まとめ|申立書は「理由の整理」と「資料との整合」が重要
氏の変更許可申立書は、単に書式の空欄を埋めればよいものではなく、「やむを得ない事由」があることを、経緯、現在の支障、変更の必要性という流れで整理して記載することが重要です。
とくに「申立ての理由」の欄では、抽象的な表現や感情的な説明にとどまらず、中心となる事情を定めたうえで、必要な範囲で補足事情を加えながら、申立ての理由の軸がぶれないように記載していく必要があります。
また、申立書の記載は添付資料と切り離して考えるものではありません。戸籍や通称使用の資料などから読み取れる内容を踏まえて、申立書全体を組み立てることが大切です。
そのうえで、提出前には、記載漏れや誤記、署名欄、添付書類、申立手数料等に不足がないかも確認しておきましょう。申立書の内容と形式の両方を整えておくことで、家庭裁判所への申立てをよりスムーズに進めやすくなります。
よくある質問
氏の変更許可申立書は、どこで入手できますか?
氏の変更許可申立書は、裁判所のホームページからダウンロードできるほか、各家庭裁判所の受付窓口にも備え付けられています。実際の書式や記載例を確認しながら作成したい場合は、裁判所の公式案内ページを参照すると分かりやすいでしょう。
氏の変更許可の申立書|裁判所の書式・記入例
氏の変更許可申立書は、裁判所の様式を使わなければなりませんか?
現在は、裁判所が公開している氏の変更許可申立書の様式を使うことをお勧めします。必要な記載項目が整理されており、裁判所側でもその様式を前提に事務処理をしているためです。
申立ての理由の欄に書ききれない場合は、無理に詰め込まず、別紙に整理して添付したり、必要に応じて陳述書を付けたりして対応するとよいでしょう。
氏の変更許可の申立書|裁判所の書式・記入例
氏の変更許可申立てには、どのような書類が必要ですか?
氏の変更許可の申立てでは、申立書のほか、現在の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)が必要です。これに加えて、事情に応じて住民票や戸籍の附票、「やむを得ない事由」を証する資料を添付します。
また、同じ戸籍に15歳以上の子がいる場合には、その同意書も問題になります。必要書類は事情によって変わるため、戸籍だけで足りる場合もあれば、他の資料が必要になる場合もあります。
戸籍や住民票などの証明書には、有効期限がありますか?
申立てに使用する現在の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)や住民票、戸籍の附票は、一般に申立て前3か月以内のものを用意します。これに対して、除籍や改製原戸籍については、有効期限はありません。
住民票や戸籍の附票は、どのような場合に必要になりますか?
住民票や戸籍の附票は、氏の変更許可申立てで常に必須になる書類ではありません。ただし、本籍や筆頭者が分からない場合や、住民票の正式な住所表記を確認したい場合には、取得しておくとよいことがあります。
これに対して、日本国外に居住していて日本国内の最終の住所を明らかにする必要がある場合や、日本国内に一度も住所を有したことがない場合には、戸籍の附票の提出が必要になります。
申立てに添付する資料は、原本とコピーのどちらを提出すればよいですか?
戸籍謄本等の公的証明書や同意書などは、原本を提出するのが基本です。これに対して、「やむを得ない事由」を証する資料は、写しを提出することが通常です。
また、戸籍謄本等の原本の返却を希望する場合は、写しを添えて返却を請求します。資料ごとに提出方法が異なるため、申立て前に整理しておくことが大切です。
家庭裁判所の手続案内PDF
自分の事情が「やむを得ない事由」に当たるか分からない場合は、どう考えればよいですか?
氏の変更許可申立書を書く前提として、まずはご自身の事情が「やむを得ない事由」として整理できるかを確認することが重要です。単に違和感がある、困っているというだけでは足りず、どのような経緯があり、現在どのような支障があり、そのためになぜ氏の変更が必要なのかを整理して考える必要があります。
ただし、どのような事情が「やむを得ない事由」に当たるのかは、申立書の書き方とは別に検討すべき問題です。具体的な考え方や典型例については、氏の変更に必要なやむを得ない事由:成功と却下の事例で詳しく解説しています。