氏の変更許可申立書の書き方|必要書類・申立ての理由・同意書を司法書士が解説

氏の変更許可申立書と戸籍などの添付資料を整理するイメージ

氏の変更をするには、家庭裁判所へ氏の変更許可を申し立てる必要があります。申立てには、氏の変更許可申立書のほか、戸籍などの必要書類や、申立ての事情に応じた資料を準備します。

この申立書には、本籍や住所、変更前後の氏などの基本事項に加えて、氏の変更を求める理由を記載します。特に「申立ての理由」は、申立てに至った経緯や現在の支障、氏を変更する必要性が伝わるように整理して、「やむを得ない事由」があることを説明します。

この記事では、氏の変更許可申立てに必要な書類、申立書の各欄の書き方、「申立ての理由」のまとめ方、家庭裁判所へ提出する前に確認しておきたい事項を司法書士が解説します。

家庭裁判所への申立てから審理、許可後の氏の変更届、戸籍への反映までの全体の流れについては、氏の変更手続の流れをご覧ください。

氏の変更許可申立書を作成する前に確認しておきたいこと

氏の変更許可申立書を書き始める前に、まず、どのような事情を理由として氏の変更を求めるのかを整理します。氏を変更したいと思うに至った出来事や事情が複数ある場合でも、すべてを同じように並べるのではなく、申立ての中心となる事情を確認しておくことが重要です。

次に、その事情をどの資料から確認できるのかを整理します。戸籍などの公的証明書から明らかになる事実もあれば、それ以外の資料で裏付ける必要がある事実もあります。また、資料だけでは分からない事情については、申立書の中で説明する必要があります。

申立書を作成する前に、「どの事情を理由として説明するのか」「その事情はどの資料から確認できるのか」を対応させておくことで、申立ての理由や添付資料を整理しやすくなります。

なお、どのような事情が戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」に当たるのかという問題と、その事情を申立書にどのように記載するかという問題は分けて考える必要があります。

「やむを得ない事由」の考え方や、実際に許可・却下された事例については、氏の変更に必要なやむを得ない事由:成功と却下の事例で詳しく解説しています。

改姓手続の準備|申立てに必要な書類と注意点

氏の変更許可申立てでは、申立書のほか、現在の戸籍全部事項証明書や、申立人の事情に応じた公的証明書、「やむを得ない事由」を裏付ける資料などを提出します。

必要になる書類や資料は、現在の戸籍の状態や氏を変更する理由によって異なります。まず、戸籍などの公的証明書と、「やむを得ない事由」を裏付ける資料を分けて整理しておくと、申立ての準備を進めやすくなります。

戸籍と住民票・戸籍の附票

氏の変更許可申立てでは、申立人の現在の戸籍全部事項証明書が基本となる書類です。現在の戸籍から申立人の身分関係を確認するとともに、申立ての事情によっては、過去の戸籍や住民票、戸籍の附票も必要になります。

過去の戸籍が必要になる場合

現在の戸籍だけでは、氏の変更を求める事情や身分関係の経過を確認できない場合があり、この場合には、除籍や改製原戸籍など、過去の戸籍を求められることがあります。

例えば、婚姻、離婚、養子縁組、離縁などによって氏や戸籍が変動している場合には、現在の戸籍だけではその経過を確認できないことがあります。申立ての理由となる事情を確認できる範囲まで、過去の戸籍をさかのぼって取得します。

住民票や戸籍の附票が必要になる場合

住民票や戸籍の附票は、氏の変更許可申立てで常に必要になる書類ではありません。ただし、現在又は過去の住所を確認する必要がある場合は、必須の書類になります。

例えば、日本国外に居住していて日本国内に住民票がない場合、あるいは出生後一度も日本国内に住所を持ったことがない場合には、管轄する家庭裁判所を確認するため、戸籍の附票を用意して、日本国内の最終の住所、または住所を持ったことがないことを証明する必要があります。

戸籍や住民票は取得時期も確認します

現在の戸籍全部事項証明書、住民票、戸籍の附票は、申立て前3か月以内に発行されたものを用意します。これに対して、除籍や改製原戸籍については、過去の身分関係を証明する書類であるので、通常はこのような有効期限の制限はありません。

「やむを得ない事由」を証明できる資料

「やむを得ない事由」を裏付ける資料は、氏を変更する理由や申立人の状況によって異なります。定型的な資料を提出すれば許可されるというものではなく、申立書で説明する事情に応じて準備します。

例えば、婚姻前の旧姓への変更や外国人配偶者の氏への変更などでは、戸籍から申立ての前提となる身分関係を確認できます。一方で、現在の戸籍だけでは氏を変更する必要性まで明らかにならない場合には、その事情を裏付ける資料が必要です。

通称の永年使用を理由とする場合には、実際にその氏を継続して使用してきたことが分かる資料が重要になります。郵便物だけに限らず、勤務先、学校、取引、契約など、日常生活や社会生活の中で使用してきたことを確認できる資料を整理します。

提出する資料は、申立書に記載する内容と対応していることが重要です。どの資料によって、どの事実を確認できるのかを整理しておくと、申立ての理由と証拠資料の関係が分かりやすくなります。

戸籍などの公的証明書は、原本を提出するのが基本です。これに対して、「やむを得ない事由」を裏付ける資料は、写しを提出することが通常です。

なお、戸籍などの原本の返却を希望する場合には、写しを添えて原本の返却を求めることができます。

苗字の変更についての15歳以上の子供の同意書

家庭裁判所の許可を得て氏を変更すると、同じ戸籍にいる人の氏も変更されます。そのため、同じ戸籍に15歳以上の子供がいる場合には、その子供が氏の変更に同意していることを示す同意書が求められます。

申立人が婚姻している場合には、筆頭者とその配偶者が申立人となりますが、同じ戸籍にいる子供は申立人にはなりません。このため、15歳以上の子供については、同意書によって氏の変更についての意思を確認します。

15歳未満の子供については、同意書は必要ありません。また、婚姻などによってすでに別の戸籍にいる子供は、今回の氏の変更によって氏が変わらないため、その子供の同意書も必要ありません。

同じ戸籍にいる15歳以上の子供の同意書を提出しない場合には、家庭裁判所からその子供に対して、氏の変更についての意見照会が行われます。

子供が成人している場合には、分籍によって現在の戸籍から離れ、本人だけの新しい戸籍を作る方法があります。子供が分籍して別の戸籍に移れば、親の氏の変更によってその子供の氏が一緒に変わることはありません。

氏の変更許可申立書の各欄の書き方

必要書類や資料を準備したら、氏の変更許可申立書を作成します。申立書は裁判所のホームページからダウンロードできるほか、家庭裁判所の窓口でも入手できます。必要な記載項目が整理されているため、裁判所が公開している様式と記載例を確認しながら作成するとよいでしょう。

申立書には、申立先の家庭裁判所、申立人の表示、添付書類、「申立ての趣旨」、「申立ての理由」などを記載します。以下では、各欄の基本的な書き方を順番に確認します。

管轄・日付・署名などの欄の書き方

氏の変更許可申立書の管轄・日付・署名などの欄
管轄・日付・署名などの欄

申立書の冒頭には、申立先の家庭裁判所、申立日、申立人の署名など、申立ての基本情報を記載します。

家庭裁判所の欄には、申立先となる家庭裁判所を記載します。氏の変更許可申立ての管轄は、原則として申立人の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立て前に裁判所の管轄表などで確認しておきます。

日付欄には、申立書を家庭裁判所へ提出する日を記載します。郵送で申し立てる場合には、発送する日付を記入するとよいでしょう。

署名欄には、申立人が戸籍上の氏名を記載します。夫婦が共同して申し立てる場合には、それぞれの申立人について記載します。

添付書類欄の書き方

氏の変更許可申立書の添付書類欄
添付書類欄

添付書類欄には、現在の戸籍全部事項証明書、15歳以上の同籍者の同意書、「やむを得ない事由」を裏付ける資料など、実際に家庭裁判所へ提出する書類を記載します。

戸籍の附票や住民票など、申立書にあらかじめ記載されていない書類を提出する場合には、空欄部分にその書類名を記入します。

申立人欄・本籍・住所・氏名の書き方

氏の変更許可申立書の申立人欄
申立人欄

申立人欄には、氏の変更を求める本人について、本籍、住所、氏名、生年月日などを記載します。

本籍と氏名は戸籍の記載に沿って、住所は現在の住所を記載します。普段使用している通称や旧姓ではなく、戸籍上又は住民票上の表示を基準にします。

申立人が未成年で法定代理人による手続が必要な場合には、法定代理人欄も記載します。親権者が父母双方である場合には、現在の親権関係を確認したうえで記載します。

「申立ての趣旨」の書き方

氏の変更許可申立書の申立ての趣旨の欄
「申立ての趣旨」の欄

「申立ての趣旨」は、申立てによってどの氏への変更を求めるのかを記載する欄です。裁判所の書式では、現在の氏と変更を希望する氏を、それぞれ所定の欄に記入します。

氏の振り仮名についても、現在戸籍に記録されている振り仮名と、変更後に記録を希望する振り仮名を記載します。氏の文字だけでなく振り仮名も審判の対象となるため、希望する氏と読み方を正確に確認しておきます。

「申立ての理由」の記載欄の見方

氏の変更許可申立書の申立ての理由の欄
「申立ての理由」の記載欄

「申立ての理由」の欄は、申立ての理由に近い類型を選択する部分と、申立人自身の具体的な事情を記載する部分に分かれています。

上段には、氏の変更を求める理由として典型的な事情があらかじめ記載されています。該当するものがあれば選択し、当てはまるものがない場合には「その他」を選びます。

下段には、氏を変更したいと考えるに至った経緯、現在生じている支障、なぜ氏の変更が必要なのかなどを具体的に記載します。

この欄に書ききれない場合には、別紙や陳述書を添付して詳しく説明する方法もあります。具体的な申立ての理由の組み立て方については、次の章で解説します。

「申立人と同一戸籍内の15歳以上の者」の欄

氏の変更許可申立書の申立人と同一戸籍内の15歳以上の者の欄
「申立人と同一戸籍内の15歳以上の者」の欄

申立人と同じ戸籍に15歳以上の者がいる場合には、その者の氏名、住所、年齢などをこの欄に記載します。

15歳以上の同籍者については同意書の提出が求められ、同意書を提出しない場合には、家庭裁判所から本人に対して氏の変更についての意見照会が行われます。

「申立ての理由」はどのように書くべきか

「申立ての理由」では、氏の変更を求める事情を具体的に説明します。ここでは、理由の組み立て方と添付資料との関係について解説します。

中心となる事情をもとに申立ての理由を組み立てる

申立ての理由を書くときは、まず、「やむを得ない事由」の中心となる事情を定めます。そのうえで、その事情について、どのような経緯があり、現在どのような支障が生じていて、なぜ氏を変更する必要があるのかという流れで組み立てます。

氏の変更を考えるまでに複数の事情がある場合でも、それらをすべて同じ重みで並べるのではなく、中心となる事情を軸にして、補足的な事情を必要な範囲で加えます。

また、「不便である」「支障がある」「違和感がある」といった抽象的な表現だけでは、申立人自身の事情が十分に伝わりません。感情を記載する場合も、その背景にある具体的な事情や現在の支障との関係が分かるように記載することが重要です。

裁判例の文言や「やむを得ない事由」という表現をそのまま引用するだけでも足りません。申立書では、申立人自身にどのような事実があり、そのために氏の変更が必要なのかを具体的に説明します。

申立書と添付資料の内容を整合させる

申立書に記載する事実は、戸籍やそのほかの添付資料から読み取れる内容と整合している必要があります。資料から確認できる事実については、その内容に沿って申立ての理由を記載します。

通称の使用状況などを示す資料を提出する場合も、申立書の記載と資料の内容が対応しているかを確認します。複数の資料を提出する場合には、資料同士の内容に食い違いがないかも確認しておきます。

一方で、申立ての理由となる事情のすべてについて資料が存在するとは限りません。資料からは分からない事情については、申立書や陳述書などで経緯や支障の内容を具体的に説明します。

申立書を提出する前に確認したいポイント

氏の変更許可申立書と必要書類の準備ができたら、家庭裁判所へ提出する前に、記載漏れや添付漏れなどがないかを最終確認します。形式的な不備があると、補正や追加提出が必要になることがあります。

  • 本籍、住所、氏名、生年月日などの基本情報に誤りがないか
  • 現在の氏と変更を希望する氏、氏の振り仮名に誤りがないか
  • 日付、署名、法定代理人などの必要な欄に記載漏れがないか
  • 申立先となる家庭裁判所に誤りがないか
  • 申立書に記載した添付書類や資料がすべてそろっているか
  • 申立書の記載と戸籍や添付資料の内容に食い違いがないか
  • 申立手数料の収入印紙と予納郵券を準備しているか

予納郵券の金額や内訳などは家庭裁判所によって異なるため、申立先の家庭裁判所の案内を確認して準備します。氏の変更許可申立てにかかる費用や手続全体の期間については、氏の変更手続にかかる期間と費用で詳しく解説しています。

まとめ|氏の変更許可申立書は必要書類と申立ての理由を整理して作成する

氏の変更許可申立てでは、現在の戸籍全部事項証明書を基本として、事情に応じて過去の戸籍、住民票、戸籍の附票、「やむを得ない事由」を裏付ける資料などを準備します。同じ戸籍に15歳以上の者がいる場合には、同意書についても確認します。

申立書には、申立人の本籍・住所・氏名などを記載します。特に「申立ての理由」は、氏の変更を求める中心となる事情を整理し、申立書の記載と提出する資料の内容が対応するように作成することが重要です。

作成後は、記載漏れや添付漏れ、申立書と資料の内容に食い違いがないかを確認してから家庭裁判所へ提出します。

申立て後の審理から許可、氏の変更届、戸籍への反映までの流れについては、氏の変更手続の流れで解説しています。

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