国籍の喪失と戸籍の消除
日本の国籍はいくつかの場合になくなります。日本の国籍がなくなると、その人は日本の戸籍から除籍され、同じ戸籍に他の人がいなければ、その戸籍全体が除籍になります。
日本の国籍がなくなった後も、国籍を喪失した人が戸籍の届をして、国籍の喪失よりも新しい記録がされている場合は、国籍喪失以後のその人についての戸籍届が全て無効になり、戸籍の訂正をすることになります。
なぜならば、日本人ではない人が日本の戸籍を持てないからです。
日本国籍がなくなる条件
日本国籍の喪失については、国籍法11条から16条までに規定があります。
- 自己の志望によって外国籍を取得したとき(国籍法11条1項)
- 外国の国籍も有する日本人、その外国の法令によりその国の国籍を選択したとき(国籍法11条2項)
- 日本国外で生まれた、日本国籍と外国籍を出生により取得した人で、国籍留保の届をしなかったとき(国籍法12条)
- 外国籍も有する日本人で、日本国籍を離脱する届出をしたとき(戸籍法13条)
- 外国籍も有する日本人が一定期間内に日本国籍を選択せず、法務大臣から一定期間内に国籍を選択するよう催促を受けた後、1か月が経過したとき(戸籍法14条1項、15条)
- 日本国籍を選択した日本人が、外国籍を喪失していない場合で、自己の志望でその外国の公務員に就職した場合で、法務大臣から日本国籍の喪失の宣告を受けたとき(国籍法14条2項、16条)
外国籍を取得した場合
自分の意思で日本以外の国の国籍を取得すると、日本の国籍を失います。(国籍法11条第1項)
外国籍を取得した時点で日本国籍がなくなり、国籍の喪失の戸籍の届をしなければなりません。この場合は、日本国籍を失ったことを知った日から1か月以内(外国に住んでいる場合は3か月以内)に国籍喪失届をしなければなりません。(戸籍法103条)
ポイントは、国籍喪失届をしなくても、日本国籍は失われているということです。
外国籍を選択した場合
日本国籍と外国籍を持っている人が、日本以外の国の国籍を選択した時は、日本の国籍を失います。(国籍法11条第2項)
この場合も国籍喪失届をしなければならないことは、上と同じです。
国籍留保の届をしなかった場合
出生時に日本国籍と外国籍を取得した日本国外で生まれた子が、出生から3か月以内に国籍留保の届をしなかった場合は、生まれた時から日本国籍がなかったものとして扱われます。(国籍法12条)
現在では出生届の用紙に「国籍を留保する」と印字されているので、別途国籍留保の届を用意する必要はありません。しかし、問題になるのは、出生届をせずに出生から3か月経過してまった場合です。この場合は、日本国籍を有しなかったことになるので、日本の戸籍に生まれた子供は記録されません。
国籍離脱の届出をした場合
外国籍も持っている日本人は、日本国籍の離脱の手続きをすることができます。
国籍離脱の届出は、法務局若しくは在外日本領事館又は大使館に国籍離脱を届て、一定の審査を得た後、国籍を喪失した戸籍の記録がされます。
この場合は、法務局長から本籍地の市区町村へ通知がされるので、国籍喪失の届出をする必要はありませんが、国籍喪失届出をすることもできます。
日本国籍の選択をしない場合
日本国籍と外国籍を18歳までに取得した日とは20歳までに、18歳になった後に取得した時は取得の日から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければなりません。そして、日本国籍を選択する場合は、国籍選択の戸籍届をしなければなりません。(戸籍法104条の2)
この期間内に外国籍の放棄又は国籍の選択がない場合は、催促の通知又は官報に催促が掲載されます。
通知を受け取った後又は官報に掲載された翌日から1か月が経過しても日本国籍を選択しない場合は、1か月が経過した時に日本国籍を喪失した事になります。
よく質問をうけますが、日本国内に住んでいる場合は、通知を受け取ってから対応すれば十分に間に合うので、あまり問題にならないと思います。しかし、外国に住んでいて、日本の住民票がない場合は、官報に掲載されていることもあるので、手遅れになっていることもあります。
その他
その他に特殊な事情で日本国籍を喪失することがありますが、特殊な状況ですので、省略します。
日本国籍の再取得
上の事情で日本国籍を失った後でも、比較的簡単に日本国籍を再取得することができる場合があります。
出生時に国籍留保の届をしなかった場合
出生から3か月以内に出生届と国籍留保の届をしなかった場合、その子供は最初から日本国籍を取得しなかったことになります。
この場合であっても、日本国内に住所があり、本人が18歳未満である場合は、法務局の国籍課に国籍再取得の届出をすることで、日本国籍を取得できます。(国籍法17条第1項)
手続きの案内は、法務局の国籍再取得の届出のページで説明があります。
国籍選択の催促を受けた後、1か月以上が経過した場合
国籍選択の催促の通知を受けた又は官報に掲載された後、日本国籍を喪失してしまった場合も、同じように日本国籍を再取得することができます。(国籍法17条第2項)
しかし、この場合は条件が厳しく、日本国籍を喪失した後1年以内に国籍再取得の届をしなければなりません。
また、国籍がないこと又は日本国籍を取得することで外国籍がなくなることも条件になります。