日本国籍を持っていない人が、日本の国籍を取得する方法は、帰化の手続、国籍取得届の手続、国籍再取得届の手続があります。どの手続も日本国籍を取得することに違いはありませんが、手続をする人の状況で選択する手続が変わります。
それでは、どういった人が、どの手続を選ぶのかを解説していきます。
1.帰化と国籍取得の違い
帰化と国籍取得、国籍再取得のいずれの手続も、手続を始める時点では日本国籍を持っていないことに違いはありません。それぞれの違いは、手続をする人が成人しているかどうか、親の片方又は両方が日本人であるかどうかで決まります。
具体的には:
- 未婚の日本人男性と外国人母の未成年の子供の場合→国籍取得届
- 日本国外でうまれた日本人の子で、国籍留保届をしなかったために日本国籍をなくした未成年の子供→国籍再取得届
- 上記以外で日本国籍を保持していない人→帰化許可申請
簡単に帰化と国籍取得・国籍再取得の手続の違いをまとめると、次の表のようになります。
手続の種類 | 国籍取得届 | 国籍再取得届 | 帰化許可申請 |
---|---|---|---|
対象になる人 | 日本国籍のない未成年 | 日本国籍のない未成年 | 日本国籍のない人 |
対象になる人の両親 | 日本人父と外国人母 | 両親が日本人又は片方が日本人 | 制限なし |
その他 | 生まれた時に両親が結婚していなかったこと 生まれた後に日本人父から認知されたこと |
日本国外で生まれたこと 国籍留保の届をしなかったこと |
特になし |
2.国籍取得届の手続をする人
国籍取得届の手続は、未婚の外国人母の子供で、生まれた後に日本人父から認知された未成年の子供がすることができます。国籍再取得の場合とは違い、国籍取得届をするまでは、その未成年の子供は日本人になりません。ですので、その子供が、日本人父に認知された後、国籍取得届をせずに成人してしまった場合は、国籍取得届ではなく、帰化許可申請をすることになります。
日本人父から出生後に認知された子供は、民法では、生まれた時に遡って法律上の親子になりますが、国籍法では、国籍取得の届出を法務局にした時から、日本国籍を取得します。(国籍法3条)
以前は、日本人父の認知のほかに、日本人父と外国人母の結婚も条件になっていましたが、平成20年に最高裁判所が違憲だと判断して、両親の結婚は条件ではなくなりました。
3.国籍再取得届の手続をする人
日本国籍再取得届の手続は、日本国外で生まれた後、生まれた時から3か月以内に国籍留保の届をしなかった未成年の子供で、日本国内に住所がある人がする手続です。(国籍法17条、12条)
日本国外で生まれた日本人の子供は、3か月以内に出生届と同時に国籍留保の届をしなかった子供は、生まれた時から日本人ではなかったことにされます。(自然災害等で遅れてしまった場合は、猶予期間があります。)現在は、出生届の用紙に国籍留保の意思表示の欄があり、チェックをすることで出生届の用紙1枚で国籍留保の届もしたことになるので、国籍留保を忘れてしまうということはないと思います。
しかし、その後、両親の都合等で日本国内に移住した日本国籍をなくした未成年の子供は、帰化許可申請とは違い、日本人の子供であることを証明できる限り、国籍再取得届をするだけで簡単に日本国籍を復活させることができます。
4.帰化の手続をする人
日本国籍のない人(外国人)で、国籍取得届・国籍再取得届の手続の対象外の人が、日本国籍を取得するためには、帰化許可の申請をして、法務大臣の許可を得る必要があります。(国籍法5~8条)国籍取得届や国籍再取得の手続のように未成年であることは求められませんが、国籍再取得の手続と同様に日本国内に住所があることが必要です。
日本国籍を取得しようとする人の状況によって、条件が緩和されます。たとえば、国籍取得届、国籍再取得届の条件を満たしていたけれど、成人してしまったような場合も、条件が緩和されます。
5.まとめ
日本国籍を持つ人の未成年の子供が日本国籍を持っていない場合は、届出だけで日本国籍を取得することが可能です。かりに条件を満たしていない、あるいは満たさなくなった場合でも、帰化許可の手続の条件が緩和されるので、まったくの外国人と比べると帰化しやすいです。
それでも帰化の手続は長い時間がかかるので、できれば、届出だけで日本国籍を取得する方が簡単です。
実は、国籍の再取得の届出には、もう一つのパターンがあります。しかし、このパターンの前提になる状況が、現在の国籍法の実務では、ほとんど発生しないので、説明を省略しました。