氏や名の変更許可の申立てや、子の氏の変更許可の申立てなど、家庭裁判所へ申立てをする際には、現在の戸籍謄本だけでなく、除籍や改製原戸籍まで必要になることがあります。本籍地から離れた場所で暮らしている場合、どういった方法で取得すればよいか迷う方も少なくありません。
戸籍の取得方法には、窓口請求、郵送請求、コンビニ交付、広域交付制度の4通りがあります。この記事では、それぞれの請求方法と特徴を比較したうえで、令和6年3月1日から始まった広域交付制度について、利用できる範囲や請求時のポイントをあわせて解説します。
戸籍謄本の取得方法は4つ|まず比較して選ぶ
戸籍謄本や除籍または改製原戸籍謄本を取得する方法には、本籍地の窓口で請求する方法、郵送で請求する方法、マイナンバーカードを使ったコンビニ交付、そして令和6年3月1日から始まった広域交付制度の4通りがあります。
状況によって使いやすい方法は異なります。まずは全体像を比較したうえで、自分に合う方法を確認できます。
| 方法 | 請求先 | 取得できる証明書 | 代理人請求 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 窓口請求 | 本籍地の市区町村役場 | 戸籍・除籍・改製原戸籍 | 可(委任状) | 原則即日交付される |
| 郵送請求 | 本籍地の市区町村役場 | 戸籍・除籍・改製原戸籍 | 可(委任状) | 遠方でも請求できるが、日数と費用がかかる |
| コンビニ交付 | 全国のコンビニエンスストアなど (本籍地の市区町村が対応している場合) |
現在の戸籍のみ | 不可 | マイナンバーカードがあれば手軽に取得できる |
| 広域交付制度 | 本籍地以外の市区町村役場を含む、全国の市区町村窓口 | 戸籍・除籍・改製原戸籍 (謄本のみ) |
不可 | 複数の本籍の戸籍をまとめて取得できる |
本籍地が近い場合は窓口請求、本籍地から離れて暮らしていて現在の戸籍だけで足りる場合はコンビニ交付、除籍や改製原戸籍まで含めてまとめて取得したい場合は広域交付制度が候補になります。それぞれの請求方法は、次の章で詳しく説明します。
本籍地の窓口・郵送・コンビニで取得する
本籍地の窓口で請求する
戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場の窓口で請求することができます。請求できるのは、戸籍に記載されている本人、配偶者、直系尊属、直系卑属です。それ以外の方が請求する場合は、委任状などが必要です。
窓口では、交付申請書に加えて、運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの本人確認書類の提示を求められます。手数料は法定されており、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)が1通450円、除籍又は改製原戸籍が1通750円です。
必要な戸籍がその場で分かっている場合、窓口での請求は即日交付を受けられることがほとんどです。ただし、古い改製原戸籍など、確認に時間を要する戸籍の場合は、即日交付とならないこともあります。
詳しい請求方法は、法務省「戸籍ABC」で確認できます。
本籍地へ郵送で請求する
本籍地が遠方にあり、窓口へ出向くことが難しい場合は、郵送で請求する方法があります。本籍地の市区町村役場のホームページから交付申請書をダウンロードし、本人確認書類の写し、手数料分の定額小為替、返信用封筒・切手とあわせて郵送します。
郵送請求では、交付手数料以外にも費用がかかる点に注意が必要です。手数料の支払いには定額小為替を用いるのが一般的ですが、定額小為替そのものにも郵便局で1枚あたり200円の発行手数料がかかります。これに加えて、申請書類を送付する際の郵送料、返信用封筒に貼る郵便切手代、速達や簡易書留を利用する場合の追加費用も発生します。
また、必要な戸籍の通数や種類が事前に分からない場合、定額小為替を過不足なく用意することが難しいという実務上の注意点もあります。発送から返送までは、1週間から2週間程度を見込んでおくと安心です。
窓口請求と同様、詳しい必要書類は法務省「戸籍ABC」で確認できます。
マイナンバーカードでコンビニ交付を利用する
マイナンバーカードを持っている場合、コンビニエンスストアなどに設置された複合機から戸籍証明書の交付を受けることができます(コンビニ交付)。以前は住民基本台帳カード(住基カード)でも利用できましたが、住基カードは交付終了から10年の有効期限を迎えたことにより、2025年12月24日をもってコンビニ交付での利用が終了しています。現在は、マイナンバーカード、又はスマートフォンに搭載した電子証明書での利用に限られます。
コンビニ交付を利用できるかどうかは、本籍のある市区町村がコンビニ交付サービスに対応しているかどうかで決まります。対応している本籍地であれば、住所地にかかわらず、全国のコンビニエンスストアから請求することができます。ただし、住所地と本籍地が異なる場合は、事前に利用登録の手続が必要になることがあります。
なお、コンビニ交付で取得できるのは現在の戸籍のみです。除籍や改製原戸籍は、コンビニ交付の対象外のため、窓口又は郵送で請求する必要があります。
制度の詳細は、法務省「戸籍の記録事項証明書のコンビニエンスストアでの交付について」で確認できます。
本籍地以外の市区町村の窓口で広域交付制度を利用する
広域交付制度とは|本籍地以外の市区町村窓口でも請求できる
令和6年3月1日から、戸籍の広域交付制度が始まりました。本籍のある市区町村まで行かなくても、本籍地以外の市区町村の窓口で、戸籍や除籍、改製原戸籍を請求できる制度です。たとえば、本籍が大阪にあり、東京に住んでいる場合、東京の市区町村役場の窓口で、大阪の戸籍を請求することができます。
これまでは、本籍地から離れた場所に住んでいる場合、窓口へ出向くか郵送で請求するかの二択でしたが、広域交付制度を使えば、もよりの市区町村役場に足を運ぶだけで済みます。郵送請求のように定額小為替を用意したり、日数を待ったりする必要もありません。
利用できる人と取得できる戸籍
利用できるのは、戸籍に記載されている本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子や孫)に限られます。取得できるのは戸籍全部事項証明書(謄本)、除籍全部事項証明書(除籍謄本)、改製原戸籍謄本です。
一方で、戸籍個人事項証明書(抄本)、戸籍一部事項証明書、戸籍の附票やその他付属の証明書は、広域交付の制度の対象になっていません。これらが必要な場合は、本籍地の市区町村へ窓口又は郵送で請求することになります。
一度の請求で複数の本籍の戸籍をまとめて取得できる
広域交付制度の大きな利点は、本籍が複数の市区町村に分かれている場合でも、一度の窓口請求でまとめて取得できることです。
たとえば、婚姻や転籍によって本籍を移した経験がある方は、現在の戸籍だけでなく、以前の本籍地の除籍や改製原戸籍が必要になることがあります。これまでは、本籍地ごとに窓口へ出向くか、それぞれの市区町村へ郵送で請求する必要がありましたが、広域交付制度を使えば、直系親族の戸籍も含めて、最寄りの市区町村窓口で一度に請求することができます。
氏の変更許可や子の氏の変更許可の申立てでは、申立人本人だけでなく、父母や祖父母の戸籍まで必要になる場合があります。本籍がそれぞれ異なる市区町村にある場合でも、広域交付制度を利用すれば、まとめて取得できるため、利用を検討する価値があります。
請求時は現在の本籍と筆頭者の氏名が分かれば足りる
広域交付制度で除籍や改製原戸籍まで請求する場合でも、申請者自身が過去の本籍をすべて把握しておく必要はありません。現在の本籍と戸籍の筆頭者の氏名を申請書に記載すれば、請求先の窓口が戸籍の記録をさかのぼって、必要な除籍や改製原戸籍を特定してくれます。
本籍が変わったなどの経緯を覚えていない場合でも、まずは現在の本籍地の市区町村と筆頭者の氏名が分かっていれば請求できます。本籍の記載がある住民票の写しやマイナンバーカードで確認しておくと、申請書の記載がスムーズです。
ただし、いつから、いつまでの戸籍が必要かは、特定してください。例えば、現在のものだけでよいのか、生まれたときから、あるいは結婚後現在までの戸籍が必要なのかなど、必要な範囲は正確に伝えてください。不安であれば、「生まれたときから現在まで」と指定すれば、不足することはまずありません。
代理人請求・郵送請求はできない
広域交付制度は、本人が窓口に出向いて請求することが前提の制度です。委任状による代理人請求や、郵送での請求はできません。請求の際は、運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの本人確認書類の提示が必要です。
また、本籍地以外の市区町村では、戸籍の内容をその場で確認する作業が必要になるため、請求先の窓口によっては、交付までに一定の時間がかかることがあります。急ぎで戸籍が必要な場合は、事前に請求先の市区町村へ所要時間を確認しておくと安心です。
制度の詳細は、法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」で確認できます。
まとめ
戸籍謄本の取得方法には、本籍地の窓口で請求する方法、郵送で請求する方法、マイナンバーカードによるコンビニ交付、そして令和6年3月1日から始まった広域交付制度の4通りがあります。
本籍地が近い場合は窓口請求、本籍地が遠方で現在の戸籍だけで足りる場合はコンビニ交付が候補になります。
除籍や改製原戸籍まで必要な場合や、本籍が複数の市区町村に分かれている場合は、広域交付制度を利用すると、最寄りの市区町村窓口でまとめて取得できます。現在の本籍と筆頭者の氏名が分かっていれば請求できるため、過去の本籍をすべて把握していない場合でも、請求できます。