日系外国人親の漢字の氏への変更|必要資料と手続を司法書士が解説

日系外国人親の漢字の氏への変更を検討するための戸籍届書と外国証明書

日系外国人の親の氏へ変更する際、戸籍上の氏をカタカナではなく、日本由来の漢字の氏に変更したいと考える方がいます。

この手続については、公開されている裁判例は見当たりません。しかし、当事務所では、日系外国人親の漢字の氏への変更について、許可を得た複数の実績があります。

日系外国人親の漢字の氏への変更では、外国人親の氏が本来どのような漢字の氏であるのかを、証拠資料により証明することが重要です。

この記事では、日系外国人親の漢字の氏への変更がなぜ認められるのか、どのような資料を準備して家庭裁判所に説明するのか、申立てから許可後の届出までの流れを解説します。

なぜ日系外国人親の漢字の氏への変更が認められるのか

外国人親の氏へ変更すると、外国人の氏は日本の戸籍では原則としてカタカナで記録されます。そのため、日系外国人親の本来の氏が「佐藤」や「吉越」のような日本由来の漢字の氏であっても、子どもの戸籍上の氏は「サトウ」や「ヨシコシ」と記録されます。

しかし、日系外国人の場合、外国でローマ字などにより記録されている氏は、本来の漢字の氏をその国の制度に合わせて表記したものにすぎない場合があります。例えば、「SATO」と記録されていても本来の氏は「佐藤」であり、「YOSHIKOSHI」と記録されていても本来の氏は「吉越」であることがあります。

この考え方を検討する際に参考になるのが、昭和55年2月28日の京都家庭裁判所の審判です。この審判では、外国人女性が婚姻により日本人夫の氏を取得したものの、外国では漢字を使用できないためローマ字で氏が記録され、日本の戸籍ではさらにカタカナで記録されていました。

これに対し、京都家庭裁判所は、戸籍は実体法上の身分関係を反映するものであるとした上で、外国でローマ字により記録されたのは日本の漢字を使用できないためであると判断しました。そして、外国人であっても日本法上の氏を称することは妨げられないとして、その実体を戸籍へ反映することにも支障はないと結論づけています。

この審判は、日系外国人親の漢字の氏への変更を直接判断したものではありません。しかし、本来の漢字の氏が外国ではローマ字などで表記され、日本の戸籍ではカタカナで記録されているにすぎないという考え方は、日系外国人親の氏にも応用できます。

また、子どもが外国人親の氏を称するという制度の趣旨から考えても、本来の氏が「佐藤」であるにもかかわらず「サトウ」と記録するより、「佐藤」と記録する方が、本来の氏をより正確に戸籍へ反映することになります。

当事務所では、このような考え方を前提として申立てを行い、日系外国人親の漢字の氏への変更について、複数の許可を得ています。

もっとも、家庭裁判所は、その漢字が本来の氏であることを証拠資料によって判断します。そのため、日系外国人親の漢字の氏への変更では、本来の漢字の氏をどのような資料によって証明するかが重要になります。

許可を得るために準備する証拠資料

日系外国人親の漢字の氏への変更では、本来の氏がどのような漢字であるかを、証拠資料によって家庭裁判所に説明することが求められます。

外国人親の氏への変更で必要となる資料に加え、日系外国人親の本来の漢字の氏を証明する資料を準備します。一つの資料だけではなく、複数の資料を組み合わせて証明することが基本となります。

具体的には、次のような資料が考えられます。外国語で作成された証明書には、日本語訳文を添付します。

  • 日系1世の日本の除籍謄本、改製原戸籍など、日本由来の漢字の氏を確認できる戸籍資料
  • 日系外国人親と日系1世とのつながりが分かる外国の出生証明書、婚姻証明書、身分登録証明書など
  • パスポート、在留カード、外国の身分証明書など、現在使用しているローマ字表記の氏を確認できる資料
  • 現地の日本人学校、日系団体の名簿など、漢字表記の氏が使用されていることを確認できる資料

日本に住んでいる外国人親の場合

外国人親が日本に住んでいて、住民票の通称氏として日本由来の漢字の氏が記録されている場合は、この手続ではなく、外国人親の通称氏へ、子どもの日本の戸籍上の氏を改姓するための手続きで対応できることがあります。

どの資料が必要になるかは、個々の事情によって異なります。そのため、申立てをする前に、どのような資料を組み合わせれば本来の漢字の氏を証明できるかを整理しておくことが重要です。

申立てから許可後の届出までの流れ

日系外国人親の漢字の氏への変更は、家庭裁判所への申立てと、許可後の市区町村への届出によって進めます。

まず、家庭裁判所に対して、日系外国人親の本来の氏が漢字の氏であることを証拠資料により説明し、氏の変更許可を求めます。許可の審判が確定した後、確定証明書を取得します。

日系外国人親の漢字の氏への変更手続きの流れ

確定証明書を取得した後は、市区町村へ「外国人父母の氏への変更届」を提出します。届出が受理されると、子どもの戸籍上の氏が、許可された漢字の氏に変更されます。

外国人親の氏への変更手続全体については、外国人親の氏へ子どもの苗字を変更する手続|日本国籍の子の戸籍上の氏を解説で確認できます。許可後の届出については、外国人父母の氏への変更届|許可後の届出手続と必要書類で確認できます。

よくある質問

日系何世まで対象になりますか?

何世であるかだけで判断されるものではありません。本来の漢字の氏を証拠資料によって証明できるかどうかが重要です。

外国人親が亡くなっている場合も、この手続ができますか?

外国人親が亡くなっている場合は、戸籍法107条4項の手続を利用することはできません。

この場合は、事情に応じて、戸籍法107条1項による氏の変更許可申立てを検討することになります。

日本に住んでいる日系外国人親の場合も、この手続になりますか?

外国人親が日本に住民登録をしており、住民票に日本由来の漢字の通称氏が記録されている場合は、本記事で解説した手続ではなく、通称氏への変更手続が適することがあります。

詳しくは、外国人親の通称氏へ、子どもの日本の戸籍上の氏を改姓するための手続きで確認できます。

最初から漢字の氏で届出をすることはできますか?

できません。

外国人親の氏へ変更した場合、外国人の氏は戸籍では原則としてカタカナで記録されます。そのため、日系外国人親の漢字の氏へ変更するには、家庭裁判所の許可を得た上で、改めて変更の手続をする必要があります。

まとめ

日系外国人親の漢字の氏への変更は、公開されている裁判例が見当たらない手続ですが、適切な法的整理と証拠資料の準備により、認められる可能性があります。

鍵となるのは、外国人親の氏が本来どのような漢字の氏であるかを、複数の資料を組み合わせて家庭裁判所に証明することです。

日系外国人親の漢字の氏への変更を検討している場合は、申立ての前に、どの資料で本来の漢字の氏を証明できるかを整理しておくことが重要です。

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