配偶者が亡くなった後の旧姓への戻り方|復氏届と姻族関係終了届をやさしく解説

配偶者の方が亡くなられた後、今後の生活のことをどう進めていくかを考える中で、婚姻前の姓に戻ることや、配偶者の親族との関係を考える方は少なくありません。

民法では、配偶者の死亡により婚姻は終了しますが、氏については自動的に旧姓へ戻る仕組みとはなっていません。そのため、旧姓を選択される場合には、一定の手続を経て進める必要があります。

ご自身の生活環境やお仕事、親族との関係、お子さまとの関係など、事情はさまざまですが、「旧姓に戻すことはできるのか」「どのような手続が必要なのか」という点は、制度に触れる機会が多くないため分かりにくいところがあるかと思います。

この記事では、戸籍の変化といわゆる「死後離婚」を整理したうえで、制度のながれを確認しながら、落ち着いて準備を進めていただくための参考となる情報をまとめています。

いわゆる「死後離婚」とは? 2つの手続きの整理

配偶者の方を亡くされた後、新しい生活をどのように進めていくかを考える中で、「婚姻前の氏(旧姓)に戻したい」「配偶者のご親族(義理のご家族)との関係を整理したい」と感じられることは自然なことです。

世間では2つの手続きをまとめて「死後離婚」と呼ばれることがありますが、法律上の正式な用語ではありません。実際には、目的の異なる 「復氏届(ふくしとどけ)」「姻族関係終了届(いんぞくかんけいしゅうりょうとどけ)」 という2つの手続に分かれています。

まずは、ご自身がどのような点を整理したいのかを踏まえて、この2つの手続の違いを確認していきましょう。

死亡届と戸籍の記録

配偶者が亡くなられた場合、まず行われるのが「死亡届」の提出です。死亡届は、亡くなったことを知った日から7日以内(日本国外で亡くなった場合は3か月以内)に届け出なければなりません。

参考:戸籍法86条1項
第八十六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。

死亡届が受理されると、亡くなった方の戸籍には、「死亡の日時」「死亡地」「届出日」「届出人」(届出の市区町村が本籍地の市区町村と異なる場合は「送付を受けた日」と「受理者」も記録されます)が記録され除籍されます。生存している配偶者の戸籍には、「配偶者の死亡日」が記録されます。また婚姻関係も配偶者の死亡により当然に終了します。

もっとも、亡くなった方が戸籍の筆頭者で、婚姻が死亡により終了しても、生存している配偶者の氏は自動的に婚姻前の氏に戻る仕組みとはなっていません。戸籍には「配偶者の死亡日」が記録されるだけで、これ以外の戸籍の変動は起こりません。

このように、死亡届は亡くなった事実を戸籍に反映させる役割のみを持ちます。まずは、戸籍上どのような記録がされるのかを整理しておくことが大切です。

対象 戸籍の記録
亡くなられた方 ・「死亡の日時」「死亡地」「届出日」「届出人」が記録される
・死亡により戸籍から除籍される
生存している配偶者 ・戸籍に「配偶者の死亡日」が記録される
・その他の記録は変わらない
図:死亡届提出後の戸籍の記録

復氏とは?婚姻前の氏(旧姓)に戻る手続き

配偶者が亡くなられた場合、婚姻関係は法律上当然に終了しますが、生存している配偶者の戸籍には「配偶者の死亡日」が記録されるだけで、その他の記録はされません。

そのため、死亡により婚姻が終了しても、何も手続きをしなければ、婚姻中の氏を引き続き名乗り続けることになります。現在の氏を継続する限り、届出を行う必要はありません。

一方で、配偶者の死亡を契機に婚姻前の氏(旧姓)へ戻りたい場合には、別途「復氏」の手続を行う必要があります。復氏とは、婚姻前の氏に戻るための戸籍上の手続をいいます。

姻族関係終了とは?義理の親族との関係を終える手続き

配偶者が亡くなられた場合、婚姻関係は終了しますが、配偶者のご親族(義父母や義兄弟姉妹など)との法律上の親族関係(姻族関係)は、自動的には終了しません。民法上、姻族関係は婚姻の終了だけでは当然には解消されず、引き続き存続するものとされています。

そのため、配偶者の死亡後に義理の親族との法律上のつながりを整理したい場合には、「姻族関係終了」を市区町村に届け出ることで、これらの関係を終了させることができます(民法728条)。なお、この届出は、市区町村に届出るだけで効力が生じ、家庭裁判所の手続は必要ありません。

参考:民法728条
(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条
 姻族関係は、離婚によって終了する。
 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

この手続きは、姻族関係のみを整理するものです。義理の親族との関係や今後の生活を踏まえて、必要に応じて選択する手続となります。

配偶者の死亡後に旧姓に戻るための復氏の手続き

配偶者の氏(姓)を使い続けることに区切りをつけ、新しい生活をご自身の旧姓で歩み出したい場合に必要なのが、この「復氏届」です。

ここでは、復氏届を提出することで、あなたの氏(姓)と戸籍がどうなるのか、そして実際の手続きの流れについて、一つずつ確認していきましょう。

復氏届の効力:氏(姓)と戸籍はどうなるか

復氏届を提出すると、婚姻中の戸籍から除籍され、原則として婚姻前に在籍していた戸籍に復帰します(民法751条、戸籍法95条)。

参考:民法751条
(生存配偶者の復氏等)
第七百五十一条
 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
参考:戸籍法95条
第九十五条 民法第七百五十一条第一項の規定によつて婚姻前の氏に復しようとする者は、その旨を届け出なければならない。

婚姻前の戸籍がすでに除籍となっている場合又は復氏する人が新しい戸籍を希望した場合は、新たに一人の戸籍(単独戸籍)が編製されます。どちらの場合も、復氏後の氏は婚姻前の氏となります(戸籍法19条2項、1項)。

参考:戸籍法19条
第十九条 婚姻又は養子縁組によつて氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によつて、婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する。  前項の規定は、民法第七百五十一条第一項の規定によつて婚姻前の氏に復する場合及び同法第七百九十一条第四項の規定によつて従前の氏に復する場合にこれを準用する。

なお、復氏はあくまで本人に関する手続であり、お子さまがいらっしゃる場合でも、お子さまの氏には一切影響しません。お子さまも同じ氏へ変更する必要がある場合には、別途、家庭裁判所での手続(子の氏の変更許可)が必要となります(詳細は第4章「お子様の氏(姓)の取り扱いについて」で解説しています)。

また、復氏の届出で名乗る氏は最後の婚姻直前の氏です。したがって、何度かの婚姻・離婚を経て婚氏続称をしていて、最後の婚姻直前の氏と最初の婚姻直前の氏が一致しない方で、最初の婚姻前の氏を名乗ることを希望する場合、または最後の婚姻直前の氏と現在の親の氏が一致しない方で現在の親の氏を名乗ることを希望する場合は、別途裁判所の許可を得て復氏後の氏を変更する必要があります。

例えば、「田中」さんが最初の結婚で配偶者の氏「佐藤」を名乗り、離婚後も「佐藤」を続称した後、配偶者の氏「高橋」を名乗る婚姻をして配偶者の死亡後に復氏の届出をすると「佐藤」を名乗ることになります。「田中」を希望する場合は、「佐藤」の戸籍が出来上がった後に裁判所の許可を得て氏の変更届をすることになります。

同様に、「田中」さんが最初の結婚で配偶者の氏「佐藤」を名乗った後、親が養子縁組等で「田中」から「高橋」になった場合、配偶者死亡後に復氏をすると「田中」を名乗ることになり、親の氏「高橋」を希望する場合は、「田中」の戸籍が出来上がった後に、原則裁判所の許可を得る必要があります。(両親の婚姻が継続している場合は、届出のみでも可能です。)

このように、復氏届には、氏と戸籍の変動がともないます。復氏後の生活や各種名義変更の手続を見据えながら、どのタイミングで届出をするかを検討することが大切です。

復氏するタイミングと注意点(死亡後すぐ/時間が経ってから)

復氏の届出は、配偶者の死亡後いつでも行うことができます。死亡後すぐに届出をすることも、一定期間をおいてから届出をすることも可能です。復氏には期限がありませんので、ご自身の生活の状況や、今後の名義変更のタイミングなどを踏まえて判断することができます。

死亡後すぐに復氏をする場合は、相続手続や保険金の請求、遺族年金などの手続を現在の氏で進めるか、旧姓で進めるかをあらかじめ確認しておくことが大切です。復氏を行うと氏が変わるため、これらの手続の名義を揃えるために、相続開始時の戸籍一式に加えて、復氏後の戸籍を求められます。

一方で、一定期間をおいてから復氏をする場合は、現在の氏で進めていた各種手続が落ち着いた後で届出を行うことができます。ただし、復氏の届出をした時点で氏が変わるため、運転免許証、金融機関、保険、職場での手続など、名義変更が必要となるものが広く生じます。復氏後に必要となる手続の範囲をあらかじめ確認しておくと安心です。

なお、復氏は配偶者死亡後であれば、いつ届け出ても法律上の扱いは同じであり、「早いほど有利」「遅れると不利」などの違いはなく、例えば配偶者が亡くなった後10年以上経過していても問題なく手続きできます。ご自身やご家族の状況を踏まえて、無理のないタイミングで届出を行うことが大切です。

復氏届の手続きの流れと届書の記入方法

復氏をするためには、市区町村役場に「復氏届」を提出します。届け出先は届出人の住所地又は本籍地の市区町村です。届出は窓口のほか、郵送でも行うことができます。

復氏届の届出に必要なもの

  • 復氏届(市区町村で入手できます)
  • 届出人の本人確認書類

以前は、本籍地以外の市区町村に届け出る場合は、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要でしたが、現在は不要です。

また、届書への押印も現在は不要ですが、押印しても問題ありません。

復氏の手続きの流れ(ステップごとに確認)

  1. 復氏届を入手する(窓口または市区町村のWebサイトから取得)
  2. 必要事項を記入する(記入例は後述)
  3. 市区町村へ届け出る(住所地または本籍地)
  4. 受理後、婚姻中の戸籍から除籍される
  5. 婚姻前の戸籍に復帰、または新戸籍が編製される

復氏届は、配偶者の死亡後であればいつ届け出ても構いません。

復氏届の記入には、本籍・筆頭者といった情報が必要になります。事前に戸籍を取得して、内容を確認しておくと間違いがありません。

復氏届の記入方法

復氏届の記入例は、以下の札幌市のページが参考になります。ご自身の市区町村のページで「復氏届」を検索して同様のページを見つけることもできます。

札幌市:復氏届(外部サイト)

復氏届書の様式(令和7年5月以降)
復氏届のサンプル

以下では、主要な記入項目について簡単に説明します。

復氏をする人の情報を記入する欄
復氏届書の届出人の欄
復氏届の届出人の欄

復氏をする届出人の情報を記入する欄です。住民票や戸籍の記録されているとおりに記入すれば大丈夫です。

復氏後の氏、父母の情報の情報を記入する欄
復氏届書の父母の情報等の欄
復氏後の氏等の欄

届出後に名乗るを氏と父母の情報を記入する欄です。

届出後に名乗る氏は、必ず婚姻直前の氏になります。何度か結婚をしていて婚氏続称している場合でも、最終の婚姻の直前の氏でなければなりません。

父母の欄には、本人の戸籍からわかる父母の氏名を記入します。

復氏後の戸籍、亡くなった配偶者の情報を記入する欄
復氏後の戸籍、亡くなった配偶者の情報を記入する欄
復氏後の戸籍、亡くなった配偶者の情報を記入する欄

この欄には、手続き後の戸籍についての情報、亡くなった配偶者の氏名と亡くなった日付を記入します。

除籍ではない婚姻直前の戸籍に入る場合は、「もとの戸籍にもどる」にチェックをして、その戸籍の本籍と筆頭者を記入します。

婚姻直前の戸籍に戻らない、またはその戸籍が除籍になっている場合は、「新しい戸籍をつくる」にチェックをして、新戸籍の本籍と筆頭者として復氏した後の氏名を記入します。

「死亡した配偶者」の欄には、戸籍に記録されているとおりに氏名と死亡日付を記入してください。

その他、届出人署名欄
復氏届書のその他、届出人署名欄
その他、届出人署名欄

その他の欄には、例えば子供の戸籍の父母の氏名の記録を変更する場合に記入します。

子供が同じ戸籍にいる場合は、「同籍の子〇〇の父母欄の父/母の氏名を△△と変更してください」と、子供が他の戸籍にいる場合は、「本籍東京都千代田区飯田橋四丁目X番、筆頭者□□の子〇〇の父母欄の父/母の氏名を△△と変更してください」と記入します。(記入がなくても受付されます)

届出人署名欄は、本人が署名してください。押印は任意です。

記入内容に不安がある場合でも、市区町村の窓口で相談しながら記入できます。無理に書き切らずに持参して相談しても問題ありません。

戸籍への反映と確認方法

復氏届が受理されると、現在の戸籍から除籍され、婚姻前の戸籍に戻ります。婚姻前の戸籍が除籍となっている場合、または新しい戸籍を希望する場合は、単独の新しい戸籍が編製されます。戸籍が反映されるまで2~3週間程度かかる場合がありますので、名義変更の手続を予定している場合は、あらかじめスケジュールを確認しておくことが大切です。

義理のご親族との関係を整理する「姻族関係終了」の手続き

配偶者が亡くなった後、旧姓に戻すかどうかとは別に、義父母や義兄弟姉妹などのご親族との関係をどのようにしていくかを考える場面があります。

法律上、配偶者の死亡だけでは義理のご親族との親族関係(姻族関係)は自動的には終了せず、そのまま継続します。この点は「復氏(旧姓に戻る手続)」とは全く別の制度であり、混同されやすい部分です。

義理のご親族との関係を法律上整理したい場合には、ご自身の意思に基づき「姻族関係終了届」を提出することで、これらの関係を終了させることができます。手続は市区町村への届出のみで完結し、家庭裁判所での審判などは必要ありません。

ここでは、姻族関係終了とはどのような手続きか、届出によって何が変わるのか、実際の流れを含めて順番に確認していきます。

姻族関係の終了とは? 義理の親族との法的な区切り

姻族関係とは、婚姻により生じる配偶者のご親族との法律上の親族関係をいいます。配偶者が亡くなった場合でも、これらの関係は法律上当然には終了せず、生存配偶者と義父母・義兄弟姉妹との親族関係は引き続き存続します。

これらの関係を法律上終了させたい場合には、市区町村へ「姻族関係終了届」を届け出ることにより、配偶者のご親族との法律上の親族関係を終了できます。届出が受理されると、その時点で姻族関係は終了し、これにともなう法律上の扶養義務などの法的効果も消滅します。

また、姻族関係の終了は、復氏(旧姓に戻る手続)とは別の制度であり、どちらか片方のみを選択することも、両方をあわせて行うこともできます。

もっとも、姻族関係が終了しても、あくまで法律上の関係が終了するだけで、義理の親族との交流を継続するかは任意です。

いずれにしても、義理の親族との関係をどのように整理するかは、状況に応じて判断する必要があります。ここでは、次に届出の流れと注意点を確認していきます。

さらに重要な点として、姻族関係終了は、生存している配偶者本人の意思のみにもとづく手続であり、義父母や義兄弟姉妹などの姻族の同意や承諾は法律上必要とされていません。市区町村から姻族へ、姻族関係終了の届出があったことを通知する仕組みもありませんので、誰にどのように伝えるかは、ご自身のご事情や今後の関係性を踏まえて判断していくことになります。

参考:民法728条2項、1項
(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条
 姻族関係は、離婚によって終了する。
 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
参考:戸籍法96条
第九十六条 民法第七百二十八条第二項の規定によつて姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

姻族関係終了届の手続きの流れと届書の記入方法

姻族関係を終了させるためには、市区町村に「姻族関係終了届」を提出します。届出先は、届出人の住所地または本籍地の市区町村です。届出は窓口のほか、郵送でも行うことができます。

姻族関係終了届の届出に必要なもの

  • 姻族関係終了届(市区町村で入手できます)
  • 届出人の本人確認書類

本籍地の市区町村以外に届け出る場合でも、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の提出は不要です。また、届書への押印も任意で、押印がなくても受理されます。

姻族関係終了の手続きの流れ(ステップごとに確認)

  1. 姻族関係終了届を入手する(窓口または市区町村のWebサイトから取得)
  2. 必要事項を記入する(記入例は後述)
  3. 市区町村へ届け出る(住所地または本籍地)
  4. 受理後、その時点で姻族関係が終了する

姻族関係終了届は、配偶者の死亡後であればいつ届け出ても構いません。

姻族関係終了届の記入には、本籍・筆頭者といった情報が必要になります。事前に戸籍を取得して、内容を確認しておくと間違いがありません。

姻族関係終了届の記入方法

姻族関係終了届の記入例は、以下の札幌市のページが参考になります。ご自身の市区町村のページで「姻族関係終了届」を検索して同様のページを見つけることもできます。

札幌市:姻族関係終了届(外部サイト)

姻族関係終了届書の様式(令和7年5月以降)
姻族関係終了届のサンプル

以下では、主要な記入項目について簡単に説明します。

姻族関係を終了する人の情報を記入する欄
姻族関係終了届書の届出人の欄
姻族関係終了届の届出人の欄

姻族関係を終了する届出人の情報を記入する欄です。住民票や戸籍の記録されているとおりに記入すれば大丈夫です。

亡くなった配偶者の情報を記入する欄
姻族関係終了届書の亡くなった配偶者の欄
亡くなった配偶者の欄

この欄には、亡くなった配偶者の氏名と亡くなった日付、本籍及び筆頭者を記入します。

「死亡した配偶者」の欄には、戸籍に記録されているとおりに本籍及び筆頭者、亡くなった方の氏名と死亡日付を記入してください。

先に復氏を届け出ている場合は、この欄と届出をする人の本籍、筆頭者が一致しないので、注意が必要です。したがって、復氏と姻族関係終了を同時に届け出る場合は、姻族関係終了届→復氏の順番で届け出ると間違えが起こりにくいです。

その他、届出人署名欄
姻族関係終了届書のその他、届出人署名欄
その他、届出人署名欄

その他の欄に記入するべき内容は、ありません。届出人署名欄は、本人が署名してください。押印は任意です。

記入内容に不安がある場合でも、市区町村の窓口で相談しながら記入できます。無理に書き切らずに持参して相談しても問題ありません。

戸籍への反映と確認方法

姻族関係終了届が受理されると、戸籍の移動はありませんが、届出時の戸籍の届出人の身分事項に姻族関係終了の欄が設けられ、「死亡配偶者の親族との姻族関係終了日」と「死亡配偶者の氏名」が記録されます。

復氏・姻族関係終了後の「お子様の氏」と「お墓・仏壇など祭祀承継」

復氏の届出を行っても、お子様の氏には影響はありません。また、姻族関係終了をしても、お子様の氏や戸籍に変動はありません。

一方で、お墓や仏壇などの「祭祀」を誰が引き継いで守っていくかは、相続が始まったときに慣習や話し合いなどで決まります。復氏や姻族関係終了をしたからといって、自動的に変わるわけではありません。

ただし、亡くなった方の祭祀(お墓や仏壇の管理など)を引き継いだ方が、旧姓に戻ることや姻族関係終了をきっかけに、今後どうしていくかをご家族と話し合う場面が生じることがあります。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所で承継者を決める手続が用意されています。

このように、復氏や姻族関係終了を行った後には、

  • お子様の氏をどうするか(必要に応じて裁判所の手続を利用する)
  • お墓・仏壇などの祭祀を誰が引き継ぐかを確認・相談する

といった点を、戸籍の手続とは別に考える必要があります。

この章では、復氏後のお子様の氏の取り扱いと、復氏・姻族関係終了と祭祀承継の関係について、特に誤解の多いポイントをわかりやすく整理して解説します。

参考:民法897条
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条
 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
参考:民法769条
(離婚による復氏の際の権利の承継)
第七百六十九条
 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第八百九十七条第一項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
参考:民法751条
(生存配偶者の復氏等)
第七百五十一条
 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
 第七百六十九条の規定は、前項及び第七百二十八条第二項の場合について準用する。
参考:民法728条2項、1項
(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条
 姻族関係は、離婚によって終了する。
 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

復氏後のお子様の氏の取り扱いについて

復氏(婚姻前の氏に戻る手続)を行っても、お子様の氏に影響はありません。復氏は届出人本人の氏のみが変更される制度であり、お子様が同じ戸籍にいる場合でも、別の戸籍にいる場合でも、お子様の氏に影響はありません。

そのため、お子様も親と同じ氏にそろえたい場合には、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる必要があります。家庭裁判所が許可した後、市区町村へ「入籍届」を提出することで、お子様の氏が変更されます。

一方で、復氏後も親と子の氏をそろえる必要がない場合や、現状の戸籍を維持したい場合には、子の氏の変更許可を申し立てる必要はありません。

なお、家庭裁判所での申立手続や必要書類、申立理由の書き方等の詳しい内容については、本記事では扱いません。

復氏・姻族関係終了と祭祀承継の関係

お子様の氏を親と同じ氏にそろえるためには、まず家庭裁判所で「子の氏の変更許可」の審判を受ける必要があります。審判にはおおむね即日~2週間程度を要することが多いですが、申立件数や裁判所の運用によって前後する場合があります。

家庭裁判所で許可が出た後は、市区町村へ「入籍届」を提出することで、初めてお子様の氏が変更されます。入籍届は、届出人の本籍地または住所地の市区町村に提出します。

なお、入籍届を提出すると、お子様の氏は届出日をもって親の氏へ変更されます。戸籍の反映には一定期間を要するため、氏の変更後に行う名義変更の手続を予定している場合は、あらかじめ時間に余裕をもって進めることが大切です。

家庭裁判所での申立てが必要となる関係上、復氏の手続と比べると準備や期間が長くなることがあります。具体的な申立書式や必要書類、審判の進み方などの詳細については、別記事で詳しく解説します。

復氏・姻族関係終了と祭祀承継の関係

お墓や仏壇などの「祭祀」に関することは、復氏や姻族関係終了の手続とはまったく別の制度として取り扱われます。復氏をしたり、姻族関係を終了したりしても、それだけでお墓や仏壇の承継者が自動的に変わることはありません。

通常、祭祀財産(お墓・仏壇など)を誰が引き継ぐかは、相続が始まったときに、亡くなった方の希望、家族の話し合い、または慣習などによって決まります。法律上は「祖先の祭祀を主宰すべき者」が承継するとされており(民法897条)、復氏や姻族関係終了とは独立して判断されます。

もっとも、亡くなった配偶者の祭祀を生存配偶者が承継している場合は、復氏することや姻族関係終了をしたことを契機として、今後もその役割を続けるのか、別の方が引き継ぐのかについて、関係するご家族で話し合いが必要になる場合があります。

話し合いで承継者が決められないときや、誰が承継すべきかについて意見が分かれるときは、家庭裁判所に申し立てをして、祭祀の承継者を決めてもらう制度があります。これは民法769条の規定が、復氏(民法751条2項)や姻族関係終了(民法728条2項)の場合にも適用されるからです。

このように、祭祀の承継は、氏の変更や戸籍の移動とは異なる観点から整理する必要があります。復氏や姻族関係終了を予定している場合には、お墓や仏壇の管理を将来どのようにしていくか、ご家族で事前に話し合っておくと安心です。

まとめ|配偶者が亡くなった後の旧姓への戻り方|復氏届と姻族関係終了届をやさしく解説

配偶者が亡くなられた後に行う可能性のある手続には、氏を婚姻前の氏へ戻す「復氏」と、義理のご親族との法律上の関係を整理する「姻族関係終了」があります。これらは目的が異なる制度で、どちらか一方のみを選ぶことも、両方をあわせて行うこともできます。

復氏は届出人本人の氏のみが変わる手続であり、お子様の氏には影響しません。お子様の氏も変更する必要がある場合には、家庭裁判所での「子の氏の変更許可」を得たうえで「入籍届」を提出する必要があります。

いずれの制度も、届出のタイミングや進め方に決まった期限はなく、ご自身やご家族の状況に応じて選択していただくことができます。今回解説した制度の特徴と流れを参考に、今後の生活を見据えながら、無理のない形で進めていただくことが大切です。

配偶者が亡くなった後の旧姓への戻り方に関するよくある質問

「死後離婚」は法律上の正式な制度ですか?

「死後離婚」は法律上の制度ではありません。配偶者が亡くなった後、婚姻前の氏に戻る「復氏」の手続きと配偶者の親族との親族関係を終了させる「姻族関係終了」の手続きを総称したものです。

復氏届や姻族関係終了届に、届出期限はありますか?

復氏、姻族関係終了のいずれにも届出の期間制限はありません

復氏(旧姓に戻る手続き)をしたら、姻族関係も自動的に終了しますか?

復氏と姻族関係終了は、それぞれ独立した手続きで、復氏のみ、姻族関係終了のみ、あるいは両方の手続きをすることができます。

復氏届を出す際、亡くなった配偶者のご親族の同意は必要ですか?

復氏の手続にあたり、亡くなった配偶者のご親族の同意や承諾は法律上必要ありません。復氏は、生存配偶者本人の意思のみに基づいて行う届出です。
ただし、配偶者のお墓や仏壇などを承継している場合には、別途話し合いが必要になることがあります。

復氏をすることで、生活上どのような不利益や手間が生じますか?

復氏をすることで、戸籍上の氏が変わるので、身分証明書等や銀行などの名義の変更手続きが必要です。

再婚を予定している場合、復氏をしておいた方がよいのでしょうか?

再婚を予定していても、復氏をしなければならないわけではありません。ただし、復氏をしないまま再婚すると、その後に氏が変わる回数が増える場合があるため、将来の手続の流れを踏まえて判断する方もいます。

姻族関係終了届を出しても、義理の親族との交流を続けることはできますか?

姻族関係の終了は、法律的な親族関係を終了させるだけですので、義理の親族と交流をすることを禁止するわけではありません。

姻族関係終了届を出したことは、義理の親族に知られますか?

姻族関係終了届出には、義理の親族への通知等は定められていません。しかし、例えば元義母の相続手続等で亡くなった配偶者の戸籍を取得することがあれば、知られる可能性があります。

母親が復氏届を出したら、子どもの氏(姓)は自動的に変わりますか?

復氏は、生存配偶者の氏だけに影響するので、子供の氏は変わりません。もし子供も同じ氏を名乗る場合は、別途裁判所の子の氏変更の許可を得て、子の入籍届をする必要があります。

復氏届や姻族関係終了届は、郵送でも提出できますか?また戸籍謄本は必要ですか?

名の変更届は、各市区町村の窓口やホームページで入手できます。記入の注意点は、戸籍、審判書等の書類の記載のとおりに記入することです。 届出には、名の変更届と許可の審判書の2点が必要で、住民票又は本籍のある市区町村に届け出ます。

復氏届や姻族関係終了届は、郵送でも提出できますか?また戸籍謄本は必要ですか?

復氏届や姻族関係終了届は、郵送でできます。現在は、本籍地以外に届け出る場合でも、原則として戸籍謄本の提出は不要です。

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