戸籍に記載されてる氏名の漢字について、誤字・俗字という言葉を聞いたことがありますか?
「正字」はその漢字の正しい字体として、辞典に記載されている字体です。この正字に対して、誤字・俗字があります。
誤字・俗字とは
明治維新後、旧宗門人別改帳等に代わって、明治4年の立法にもとづいて、明治5年に戸籍制度(壬申戸籍)が始まりました。
当時の戸籍は現代の様にデータ化されたものではなく、和紙に筆墨で書き込んでいく方式で、戸籍を新たに編製・移記したり、婚姻などで入籍する際に、担当の役人の間違いや筆癖等で、正字とは違う字体に見えてしまうことが起こりました。
俗字とは
俗字とは、誤字の中でも、長年そのまま使われているうちに、広く世間で使われるようになってしまい、一般化してしまったものをいいます。
代表的な例ですと、正字が「斉藤」であるのに対して、俗字として「齋藤」「斎藤」「齊藤」があります。もともと「斉」であるものが、以前の戸籍担当者のミスで広がっていきました。
またもともと俗字の類であった文字が、あまりにも一般的に使われてしまっているため、法律上は正字としているものもあります。
誤字・俗字の扱い
紙の戸籍簿の時代は、この誤字・俗字をそのまま使いつづけていました。
しかし、平成になり戸籍や住民票をデータ管理することになり、当時のコンピュータで扱える文字の制限からそのまま使い続けるわけにもいかなくなりました。
平成2年、これを解決するために法務省は通達を出して、データ化する際の指針を示しました。
誤字については、正字になおしてデータ化することとし、俗字は、そのまま使い続けることになりました。(必ずしも文字データになっているわけではないです)
ところが、世の中にはもとの正字がわからない誤字というものがあって、これについてはそのままデータにされることとされました。
したがって、現在の戸籍や住民票には、正字と俗字、もとの正字がわからない誤字が残っていることになります。
戸籍の訂正と誤字・俗字
現在も戸籍の氏名の漢字が誤字・俗字で記録されている人は大勢いらっしゃいます。
ところが役所としては、可能な限り正字にしていきたいと考えているようで、氏名にある誤字・俗字を正字に訂正する場合は、家庭裁判所の戸籍訂正許可の手続きをせずに、戸籍の筆頭者や本人等の申出によって、市区町村の権限で訂正することができます。(平成2年10月20日民二第5200号通達民事局長通達、平成22年11月30日民一第2903号通達の第2)
ここで、注意いただきたいのは、この平成2年10月20日民二第5200号通達民事局長通達の第2は、正字に訂正する申出の場合のみが対象になる点です。
つまり、正字から俗字に変更する場合は、市区町村に対する申出ではできず、原則どおり家庭裁判所の戸籍訂正の許可や、氏又は名の変更許可が必要になってしまう点です。なお、誤字の場合は人名に使える漢字に含まれないので、通常は変更することはできません。
改名・改姓の手続で対応しなければならない場合
特殊な事例ですが、正字Aの俗字のA′の異体字のαが戸籍の氏名に使われている場合、市区町村にαの文字の訂正の申出をすると、正字Aには市区町村の職権で訂正することができますが、A′に訂正することはできません。
同様に裁判所へ戸籍訂正許可の申立てをしても、A’に訂正することはできないです。
しかし、訂正ではなく氏の変更や名前の変更許可の申立てを家庭裁判所へして、許可を得てA’へ変更することは可能です。
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