虚偽の出生届等で戸籍に記録された人が、裁判で戸籍を訂正した後、訂正前の氏へ変更する場合 

現代ではあまりありませんが、昔は色々な事情で父母とは別の人の子供として出生届がされるような事もありました。

虚偽の出生届等と戸籍の訂正

実の父母ではない人の子供として、虚偽の出生届がされた場合、新生児は出生届に記入された母又は父母の戸籍に入ります。

この場合、母又は父母に対して、親子関係不存在確認、嫡出否認、認知無効等の裁判手続をした後、戸籍訂正の手続をすることになります。

裁判手続後、親子関係が否定された時は、真実の親の戸籍に入ることになります。

その後、出生時の戸籍から現在までの戸籍に齟齬が生じるので、戸籍の訂正手続をする必要があり、真実の親の氏を名乗ることになります。

ところがこの場合は、その子供は出生時から戸籍が訂正がされるまでの間、当初の戸籍に記録されていた父母の氏を名乗っていたはずです。

この子供が戸籍の訂正後に、訂正前の氏を継続して名乗ることができるのか。

昭和の終わりごろに、高等裁判所がこの可否を判断しています。

前提である親子関係不存在等の裁判が終わり戸籍が訂正された後に、その子供が訂正前の氏へ戸籍の氏を変更するために、家庭裁判所へ戸籍法107条第1項に基づいて氏の変更許可を申立てました、

ところが、家庭裁判所は、やむを得ない事由にあたらないとして、この申立てを却下しました。

これに対して不服申立がされ、高等裁判所は、以下の理由でやむを得ない事由にあたるとして、氏の変更を許可しました。

  • 本人に何の責任もないこと
  • 出生当時から訂正前の氏を名乗り続けていること
  • 戸籍訂正の手続で、やむをえず真実の親の氏に変わったこと

出生届当時、本人は新生児ですので、虚偽の出生届について何の責任もありません。

また、当然と言えば当然ですが、本人は出生時から戸籍上の氏名を名乗って生活していました。ところが虚偽の戸籍記録を是正したところ、戸籍上の氏名が変わってしまうと、社会的な混乱や本人の不利益が発生します。

この不利益を本人に負担させるのは不当ですので、戸籍訂正前の氏への変更が許可されました。

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