結合姓、複合姓(二重姓・ダブルネーム)とは
結合姓又は複合姓とは、結婚相手の姓と自身の姓とを組み合わせ、一つにした姓のことです。
日本にこの制度はなく、日本人同士の結婚では選べません。配偶者が外国人の場合で、配偶者の本国法で結合姓、複合姓の制度があれば、日本人の氏を結合姓・複合姓に変更できる可能性があります。
ただ、配偶者の本国法等で氏の順番(夫の姓+妻の姓、妻の姓+夫の姓)が決まっていることもあります。
日本人が結婚した場合に結合姓、複合姓(二重姓・ダブルネーム)を選ぶことができるのか?
日本人が結婚した場合は、相手方の国籍によって結合姓・複合姓を選べるかが決まります。
日本人同士が結婚した場合
日本人同士の場合は、婚姻の際にどちらの氏を名乗るか決めなければならないので、結合姓、複合姓を選ぶことはできません
日本との二重国籍者の場合はどうかというと、理論的にできなくもないと思いますが、おそらく前例がありません。
日本人と外国人が結婚した場合
この場合は、婚姻相手の国(複数の国籍を持っているときは、主な国籍)の法律等に結合姓、複合姓の制度があれば、結合姓、複合姓を選ぶことが可能になります。
ただし、必ず日本の戸籍上の氏を結合姓、複合姓にできるわけではありません。
国際結婚と戸籍の氏
国際結婚をした場合、日本人の氏は変わりません。婚姻から6か月以内であれば、戸籍法第107条2項の届をすることで、外国人配偶者の氏を名乗ることができます。
なお、6か月を過ぎてしまった場合でも裁判所の許可を得て、外国人配偶者の氏へ改姓することができます。
いずれの場合も、原則、戸籍に記録された外国人配偶者の氏のとおりにしか、戸籍の氏を変更することはできません。つまり、結合姓、複合姓を選ぶことはできません。
外国人配偶者が自身の氏を結合姓、複合姓にした場合
外国の方式で婚姻して、外国人配偶者が結合姓、複合姓を名乗った後に日本の婚姻届を提出した場合、日本の戸籍上の外国人配偶者氏名が結合姓、複合姓で記録されることになります。
以前は、戸籍法107条2項の届で、日本人配偶者の氏を、結合姓、複合姓に変更できる解釈されていました。
しかし、2015年に戸籍法107条の2の届では結合姓、複合姓にすることはできないとする戸籍の先例が出ました。
日本人配偶者が、日本の戸籍上の氏を、結合姓、複合姓(二重姓・ダブルネーム)に改姓するには
外国人配偶者が結合姓、複合姓を名乗った場合、名乗らない場合のどちらでも、戸籍の届出だけでは、日本人が結合姓、複合姓を名乗ることはできません。
結合姓、複合姓に戸籍上の氏を改姓するためには、原則どおり、裁判所の許可を得て氏の変更届をしなければなりません。(戸籍法107条1項)
結合姓、複合姓に改姓するための「やむを得ない事由」
結合姓、複合姓に改姓するための裁判所の氏の変更許可申立は、許可をもらうために「やむを得ない事由」が必要になります。
いくつかの条件を満たせば、「やむを得ない事由」があるとして、家庭裁判所は許可をします。
結合姓、複合姓(二重姓・ダブルネーム)への改姓の条件
結合姓、複合姓への改姓の条件は以下の3点があげられています。
1.配偶者の本国の法律が結合姓、複合姓を認めていること
これはもっとも大切な条件です。仮に他の条件を満たしていても、配偶者の本国の法律で結合姓、複合姓を認めていない、夫婦同姓又は夫婦別姓のみしか認めていない場合は日本の戸籍の氏を結合姓、複合姓に改姓することはできません。
イギリス等の婚姻の際に氏の規定がない国は結合姓、複合姓を認めている国と同様に、結合姓、複合姓へ変更することができます。
また、配偶者の本国で、「夫の氏+妻の氏」又は「妻の氏+夫の氏」と順番が定められている場合は、これに従わなければなりません。
2.日本人配偶者が結合姓、複合姓を名乗っていること
日常で日本人配偶者が、結合姓、複合姓を通称氏として名乗っていることが要件に挙げられています。
この点は、私の経験上、あまり重要ではないと考えています。実際に通称氏として名乗ったことがなくても、許可されることはあります。
また外国在住の場合で、その国の通称登録制度で日本人も結合姓・複合姓を登録している場合は、有利になると考えます。
3.結合姓、複合姓でないことで不利益があること
日本人の配偶者の公的証明書上の氏(=戸籍上の氏)が結合姓、複合姓でないために、日本国内、配偶者の本国又はその他の国で、日常生活又は社会的手続きで不利益がある又は不利益が生じる可能性が高いことも、要件として挙げられています。
この点も通称氏として名乗っていたことと同様で、厳密に扱われていないと感じています。
その他条件について
上記の1.~3.は、1990年代の家庭裁判所の公開されている審判例で挙げられている条件です。
しかし、現在では1.の条件を外すことはできませんが、2.と3.は厳格に審査されないように感じます。
どちらかといえば、1.の条件が必須であって、許可してはいけない事由がないことを審査しているように感じます。
また、外国人配偶者の本国法で配偶者の氏が選択ではなく、自動的に結合姓、複合姓にされる場合は、許可されやすいと感じています。
結合姓、複合姓(二重姓・ダブルネーム)への改姓手続
結合姓、複合姓への改姓手続は、他の氏の変更許可手続と変わりません。
戸籍等の必要書類を添付して、氏の変更許可申立の申立書を家庭裁判所へ提出します。
配偶者の本国法で複合姓、結合姓が認められている証拠の提出が必須です。
家庭裁判所の許可を得た後は、許可の審判書、確定証明書、戸籍届の3点を住民票のある市区町村の戸籍の窓口に提出することで、住民票はその場で、戸籍は2週間程度で変更されます。
子供の氏
裁判所の許可を得て、戸籍上の親の氏を結合姓、複合姓に変えた後は、同じ戸籍にいる子供の氏も結合姓、複合姓に変わったことになります。
また戸籍が変わった時点で別の戸籍にいた子供も、子の氏の変更許可の手続きをすることで、結合姓、複合姓にすることができます。
子供の氏のみを結合姓、複合姓にする場合
父又は母が外国人である場合、戸籍法107条4項の手続で、外国人親の氏を名乗る単独の戸籍を作ることができます。
その子供の戸籍の父母欄に記録されている父又は母の氏になるのが原則で、この手続では結合姓、複合姓にすることはできません。
未成年の子であれば戸籍法107条4項の手続で、成人した子であれば分籍の手続で、日本人親とは別の戸籍を作れるので、さらに裁判所の手続をして結合姓、複合姓に変更できるのでしょうか。
この場合、夫婦の場合と違って子供の氏は自動的に決まる国が多いので、外国人父母の本国法次第になります。
フィリピンやブラジル等のスペイン語、ポルトガル語の文化圏の場合は、子供の氏は父の氏+母の氏(母の氏+父の氏)と決まっている場合が多いので変更しやすいです。
しかし、子供の氏が父母のどちらかと同じでなければならないと法定されている国の場合は、変更できないと考えます。
まとめ
結合姓、複合姓にするための改姓手続きは、外国人配偶者の本国法の問題もあり、また、公開されている家庭裁判所の審判例が少ないので、結果の予測が難しいです。
経験としては、ヨーロッパ、南米の国は許可されることが多いです。
しかし、不可能ではないので、以下のお問い合わせフォームからご連絡をいただければと思います。
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