外国在住の日本人が、日本の家庭裁判所で改名・改姓の手続をする方法

外国に居住されている方の改名、改姓手続

外国に在住している日本人であれば、その改名、改姓をするためには、やはり日本国内の裁判所で氏の変更・名の変更許可を申立てをして、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の届出をする必要があります。

具体的に用意する証明書や資料は、日本国内に在住している方と変わりはありません。

外国の裁判所や役所でした改名、改姓手続の効力

改名、改姓の手続きは、原則的にその人の母国の法律によることになっています。

例えば、アメリカ在住の日本人が、アメリカ法で有効な改名、改姓する手続きをしても、日本の戸籍上の氏名は影響されず、日本の裁判所で別途手続きをする必要があります。なお、この場合であっても裁判所が許可をするとは限りません。

生まれた時からの二重国籍者(いわゆるハーフの子)の場合、外国の市民登録等ではミドルネームがある、氏についてその国の固有のルールがあるなどといった場合は許可される可能性が高いです。

家庭裁判所と市町村役場

では、手続をする家庭裁判所や市町村役場は、どこの役所を使うことになるのでしょうか。残念ながら、日本国外に日本の家庭裁判所や市町村役場はありません。

戸籍のある市町村

戸籍については、本籍地の市町村に保管されています。本籍地は実際に居住していなくても問題ありませんので、外国在住の方でも日本国内のどこかの市町村に戸籍があります。

例えば、ご両親の本籍地や婚姻などで新しく戸籍を作った市町村などが考えられます。

ですので、申立書に添付する戸籍や、改名・改姓の許可を得たあと戸籍の届出をするのは、この本籍地のある市町村になります。(届出は領事館に提出できます。)

家庭裁判所

家庭裁判所の管轄は、家事事件手続法226条1号で以下のとおりに管轄をする裁判所が定められています。

(管轄)

第226条 次の各号に掲げる審判事件は、当該各号に定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

  1. 氏又は名の変更についての許可の審判事件(別表第一の百二十二の項の事項についての審判事件をいう。) 申立人の住所地
  2. ・・・・以下略・・・・

この場合の住所地とは、住民票を置いている市町村のことになります。しかし、外国に在住している方は、日本国内に住所地がありません。

でも安心してください。こんな時のために家事事件手続法には別の規定があります。

(管轄が住所地により定まる場合の管轄権を有する家庭裁判所)

第4条 家事事件は、管轄が人の住所地により定まる場合において、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときはその居所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属し、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときはその最後の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

つまり、日本国内に住所・居所がない方は、日本国内の最後の住所地の家庭裁判所に申立てをすることになります。

日本国内に居住をしたことがない日本人の場合

国際化、グローバル化がすすみ、日本国籍はあるものの、一度も日本国内に住んだことがないという方も当然いらっしゃいます。そんな方の場合、当然日本国内の最後の住所地もありません。

この場合は、次の条文が答えになります。

家事事件手続法

(管轄権を有する家庭裁判所の特例)

第7条 この法律の他の規定により家事事件の管轄が定まらないときは、その家事事件は、審判又は調停を求める事項に係る財産の所在地又は最高裁判所規則で定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

家事事件手続規則

(法第七条の最高裁判所規則で定める地の指定)

第6条 法第7条の最高裁判所規則で定める地は、東京都千代田区とする。

つまり、日本国内に一度も居住したことのない方は、東京都千代田区を管轄する東京家庭裁判所に申立てることになります。

日本国内に住んでいないが、日本国内に住民票がある方

あまり手続上は良くないですが、長年外国に住んでいるけれども、日本国内の住民票も残している方もいます。

この場合は、その住民票に記載された住所を住所地として扱わざるをえないので、その住所を管轄する家庭裁判所で手続きをすることになります。

外国在住の方の改名、改姓手続の進め方

外国在住であっても、日本の戸籍上の改名、改姓をすることは上記のとおり可能です。しかし、手続きのために日本に入国することが難しい場合や、不相当に費用がかかってしまう場合もあります。

こういった場合は、日本国内にいる親戚に書類の受け取りをお願いして、ご本人は外国にいたままでも手続きをすることができます。

また弁護士は手続代理人になれるので、当然代行してもらうことができます。また司法書士も書類の受け取り、戸籍届の提出を代行できる場合が多いです。

特に2020年以降、国境を越えての移動が制限されることも珍しくなく、また、2022年以降は燃料代の高騰で費用が余計にかかることもあって、柔軟に対応してもらえる場合が多いです。

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