会社の登記事項証明書に記載される役員の旧氏の登記と氏の変更

会社の役員等と会社の登記の記録

会社の取締役等の役員は、会社の登記にその氏名が記録されます。原則、会社の登記に記録される氏名は戸籍に記録された氏名でなければならず、例外として婚姻前の氏を併記することができました。(改正前の商業登記規則81条の2)

これは婚姻前の氏で活躍していた方が婚姻で氏が変わり、同一人物であることが認識されなくなる不利益を避ける目的で定められました。

しかし、法令の文言が「婚姻前の氏」と限定していたため、例えば離婚や離縁等、婚姻以外の理由で氏が変り旧姓にもどった場合は、元の氏を会社の登記記録に併記することができませんでした。

令和4年の会社法、商業登記規則の改正

しかし、会社の役員で離婚、離縁等で生まれた時の氏に戻る方が一定数いて、婚姻中又は養子縁組中の氏を併記するニーズはありましたが、法令の文言どおりではないので、旧姓を記録して婚姻又は養子縁組中の氏を会社の登記に併記できませんでした

ところが令和4年9月、その他の会社法、登記法の重要な改正にあわせて商業登記規則81条の2も改正、「婚姻前の氏」から「旧氏」に改められ、氏が変わった原因をとわず元の氏を会社の登記に併記できるようになりました。

第八十一条の二 会社の代表者は、役員(略)又は清算人の一の旧氏(前略、記録すべき氏と同一であるときを除く。後略)を登記簿に記録するよう申し出ることができる。この場合において、当該登記簿(略)にその役員又は清算人について旧氏の記録がされていたことがあるときは、最後に記録されていた旧氏より後に称していた旧氏に限り、登記簿に記録するよう申し出ることができる。

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新任の役員であれば特に制限がなさそうですが、既に会社の登記に氏名が記録されている役員については、現在記録されている最後の旧氏よりも後の旧氏でなければ記録できない点がポイントです。それでも氏が変わったことの原因は問わないので、格段に使いやすくなっているはずです。また事後的に旧氏を記録しないように申し出ることもできます。

また離婚等で氏を変えなかった場合で継続して同じ氏を名乗る場合は、旧氏を併記することはできません。

会社の登記に旧氏を記録する手続き

手続きは必要な書類を添付して、会社の登記を管轄する法務局に申し出ることになります。

必要な書類は、旧氏が分かる戸籍です。

戸籍を取得したのち、申出書に必要事項を記載して、その戸籍とあわせて管轄法務局に申し出ます。(代理人に委任する場合は委任状も必要です。)

また既に登記されている役員の場合は氏の変更の登記申請、新任の役員の場合は役員の就任の場合は役員変更の登記申請とあわせて手続きできます。

ですので、現在、会社の役員で離婚後に婚姻中の氏を継続して名乗っている方でも、旧姓に戻して会社の登記に婚姻中の氏を併記することができるようになりました。

旧姓に戻す方法は、旧姓に戻したい方/旧姓に戻す手続きの記事をご覧ください。