帰化をして日本人になった人は、日本国籍の氏名を選べます。
この時の氏名は、人名に使える文字であれば制限はなく、帰化前の名前のカタカナ表記、帰化前の名前に漢字をあてる、全く新しい氏名にすることも可能です。
言い換えるのであれば、新しい氏名を作る権利のようなものを行使することができます。
帰化以前に日本人と結婚していた場合
帰化前に日本人と結婚していた人の場合は、氏について二つの選択肢があります。(戸籍法施行規則58条の3、昭和25年の戸籍の通達)
- 日本人配偶者の氏を名乗ることにして、帰化した人はその配偶者の筆頭者の戸籍に入る
- 帰化した人が新しい氏の戸籍を作って、日本人家族が新しい氏の戸籍に入る
1の場合は、新しい氏を作る権利を使わず、名前だけを決めたことになります。
2の場合は、氏名両方を作る権利を使ったことになります。
帰化後に離婚をする場合
上記2の場合は、離婚をしても帰化をした本人の氏を変更することはできません。
上記1の場合は、離婚の際に結婚中の氏、又は新しい氏(帰化前の外国の氏や、帰化前に住民票に記録されていた通称氏を含む)を選ぶことができます。
これは、帰化をした時点で、新しい氏を作る権利を使われなかったからだと、考えられています。(昭和23年、昭和26年の戸籍の通達)
離婚時点で、新しい氏を選ばず、結婚中の氏を名乗り続けた人が、新しい氏にする場合
離婚時点では事情(例えばお子様が幼少である等)があって、結婚中の氏を継続して名乗り続けることもあります。
しかし、お子様が大きくなった等、後で事情が変わり、婚姻中の氏を継続して名乗る必要がなくなることもあります。
日本人同士が結婚、離婚して同じような状況になった場合は、裁判所の許可を得て、結婚前の氏に戻すことができます。(参考:「離婚後に旧姓に戻さなかった人が旧姓に戻す手続き」)
結婚後に帰化をした人も、結婚前の日本の氏は存在しませんが、裁判所の許可の許可を得て、結婚中の氏から、新しい氏(帰化前の外国の氏や、帰化前に住民票に記録されていた通称氏を含む)に戸籍の氏を変更することができます。
大阪高等裁判所の判断
事例としては、引き取った子供が離婚時点で小学生で、氏が変わることで子供に負担がかかることを心配して、婚姻中の氏を選んだそうです。その後、子供が大きくなり、婚姻中の氏を名乗る必要がなくなったので、氏を変更しようと裁判所へ申立をしました。
当初家庭裁判所は、帰化前の外国の氏へ変更することを許可しましたが、本人が、それを取り下げて、改めてまったく新しい氏への変更を希望して、申立をしたところ家庭裁判所は許可をしませんでした。
大阪高等裁判所は、以下の理由で、まったく新しい氏へ変更することを許可しました。
- 形式的には本人が自分で婚姻中の氏を選んでいますが、子供のことを考えてやむを得ず婚姻中の氏を選んだこと
- 日本人同士の場合、旧氏・旧姓への変更は、通称氏としての使用の実績がなくても、認められること
特に1つ目の形式的に婚姻中の氏を選んでいるという点はとても重要で、結果的に、本人は帰化の時に氏を選べる権利を奪われることになってしまうのは不当だと考えられたからです。
手続きの注意点
まったく新しい氏を選べるといっても、新しい名前は人の氏名として戸籍に記録されるものなので、人名に使える文字でなければならないことには変わりありません。(戸籍法50条)
手続のご相談
氏の変更手続に関しての一般的な内容は、「氏の変更許可(改姓)のご相談」もご覧ください。
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