死後離婚と死後離縁の手続

死後離婚とは

死後離婚とは、正式な法律上の手続の名前ではありません。なぜならば婚姻関係は配偶者の死亡で終了し、別途手続きをする必要がないからです。

では、世間で言われている死後離婚とは何でしょうか。これは二つの手続きを指しています。

死後離婚の手続き

死後離婚にあたる手続きは以下の二つです。

  • 姻族関係終了手続き(民法728条第2項、戸籍法96条)
  • 復氏手続き(民法751条第1項、戸籍法95条)

姻族関係終了手続き

姻族関係終了とは、配偶者が死亡した後に配偶者の親族(姻族)との親族関係を終了させる手続きです。戸籍届を市区町村に提出することで完了します。

この手続きのメリットは、他の専門家の方が詳しいので、検索してみてください。

復氏手続き

復氏届の手続きは、配偶者の氏を名乗った人が、その配偶者の死亡後に婚姻前の氏に復する(戻る)手続きです。これも戸籍届を市区町村へ提出することで完了します。

この手続きも離婚と同様に、死亡した配偶者との婚姻直前の氏に戻す事しかできません。

ですので何度か結婚・養子縁組をしたことがある方で、婚氏続称又は縁氏続称の届をしたことがある人が両親の氏に戻るためには、裁判所の許可を得て氏の変更をする必要があります。

姻族関係終了手続きと復氏手続き

姻族関係終了手続きと復氏手続きは、それぞれ別の手続きなので、姻族関係終了だけ、復氏だけ、両方の手続きと選択できます。

つまり、氏は戻すけれど配偶者の親族との関係は続けることも、配偶者の親族と親族関係は終わらせるけれど氏はそのままにすることもできます。

死後離縁とは

死後離縁とは、養親又は養子の片方が死亡した後に、裁判所の許可を得て養親子関係を終了させる手続きです。(民法811条第6項)

養親子関係が終了すると、亡くなった養親子の親族との親族関係が終了します。また養親が死亡した場合であれば、養子の氏が養子縁組前の氏に戻ります。しかし亡くなった方の相続人であることには影響はありません。

また養子縁組後、7年が経過していれば、死後離縁後3か月以内に市区町村に届けることで、養子は養親の氏を継続して名乗ることができます。

死後離縁の手続き

死後離縁は裁判所の許可を得た後に、市区町村へ離縁の届を提出して初めて効力が発生します。

手続きは、生存しているのが養親か養子であるかで若干の違いがあります。

裁判所の手続き

裁判所へは、養親・養子それぞれの戸籍全部事項証明書(戸籍謄本、死亡した養親又は養子について死亡の記録がされているもの)を添付して、申立をします。その他に離縁の事情を説明する資料があれば、なお良いです。

その後、裁判所の審査を経て許可する又は許可しない審判書が発行されます。基本的には許可されることが多いですが、離縁の目的によっては許可されないこともあります。

許可の審判書を受け取った後2週間で許可が確定するので、審判書、確定証明書及び離縁届を市区町村の窓口へ提出して、離縁が成立します。

復氏手続き・死後離縁と氏の変更

上に書いたとおり、復氏手続きの場合、復氏届後に戻る氏は婚姻直前の氏だけです。死後離縁の場合も同様に離縁届後に戻る氏は、原則養子縁組直前の氏のみです。(養子縁組後に婚姻をしている場合は婚姻の方が優先されます。)

どちらも婚姻直前・養子縁組直前の氏が実親の氏とは違う場合、実親の氏へ変更する場合は家庭裁判所の許可を得て、氏の変更又は子の氏の変更の手続きをする必要があります。

手続きは「旧姓に戻したい方/旧姓に戻す手続き」の投稿をご覧ください。