日系外国人配偶者の漢字の氏への変更|手続と必要資料を司法書士が解説

日系外国人配偶者の漢字の氏への変更を検討するための戸籍届書と外国証明書

日系ブラジル人や日系アメリカ人など、日本由来の氏を持つ外国人と婚姻した場合、日本人配偶者の氏を、その外国人配偶者の漢字の氏へ変更できるかが問題となることがあります。

外国人配偶者の氏が外国の証明書ではローマ字などで記録されていても、本来は日本由来の漢字の氏であることを証明できる場合には、戸籍法107条1項による氏の変更許可申立てにより、漢字の氏への変更が可能な場合があります。

この記事では、戸籍法107条1項の手続が必要になる理由、準備する資料、家庭裁判所への申立てから許可後の届出までの流れを司法書士が解説します。

日系外国人配偶者の漢字の氏へ変更するための戸籍法107条1項の手続

日系外国人配偶者の漢字の氏への変更は、日本人配偶者が、戸籍法107条1項の氏の変更許可申立てにより、外国人配偶者の本来の漢字の氏へ変更する手続です。

ここでいう漢字の氏とは、単に外国人配偶者の氏に漢字を当てるという意味ではありません。日系外国人配偶者の氏が、日本由来の漢字の氏であり、そのことを資料によって証明できる場合を想定しています。

たとえば、日系ブラジル人や日系アメリカ人など、外国の制度上は氏がローマ字などで記録されている場合でも、その氏が本来は日本由来の漢字の氏であることを証明できる場合があります。このような場合に、日本人配偶者がその漢字の氏へ変更できるかを検討します。

なお、日本在住の日系外国人配偶者の住民票に漢字の通称氏が登録されている場合は、通称氏への変更手続で対応できます。

なぜ戸籍法107条1項の手続が必要になるのか

氏を変更する手続は、家庭裁判所の許可を得て行うことが原則です。

戸籍法107条2項は、外国人と婚姻した日本人について、次の条件を満たす場合に、家庭裁判所の許可を得ずに届出ができる特例です。

  • 婚姻後6か月以内であること
  • 戸籍の配偶者欄に記録された外国人配偶者の氏のとおりに変更すること

日系外国人配偶者の本来の氏が日本由来の漢字の氏であっても、戸籍の配偶者欄には、外国の証明書に基づく外国人配偶者の氏が記録されます。そのため、希望する本来の漢字の氏は、配偶者欄に記録された氏と一致しません。

したがって、日系外国人配偶者の本来の漢字の氏へ変更する場合は、戸籍法107条2項の特例にあたらず、婚姻後6か月以内であっても、戸籍法107条1項による氏の変更許可申立てをする必要があります。

なぜ日系外国人配偶者の漢字の氏への変更が認められるのか

日系外国人配偶者の氏が外国の証明書ではローマ字などで記録されていても、それは本来の漢字の氏が失われたという意味ではありません。日本由来の漢字の氏を、外国の制度に合わせて表記しているにすぎない場合があります。

たとえば、外国の証明書上はローマ字で記録されていても、その氏が日本の戸籍や除籍などに記録された漢字の氏に由来することを確認できる場合があります。このような場合には、外国証明書上の表記だけでなく、本来の漢字の氏をどのように戸籍へ反映できるかが問題となります。

この点を考える上で根拠として参照できるのが、昭和55年2月28日の京都家庭裁判所の審判です。この審判では、外国でローマ字により記録された氏について、外国では日本の漢字を使用できないためにローマ字で記録されたものと考え、外国人であっても日本法上の氏を称することは妨げられないという考え方を示しています。

この審判は、日系外国人配偶者の漢字の氏への変更を直接判断したものではありません。しかし、外国でローマ字などにより記録されている氏が、本来は日本由来の漢字の氏であることを資料で証明できる場合には、その本来の漢字の氏への変更を検討する際の根拠の一つになります。

そのため、日系外国人配偶者の漢字の氏への変更では、希望する漢字の氏が任意に選んだ漢字ではなく、外国人配偶者の本来の氏であることを資料によって証明することが重要です。

なお、日本国籍のある子どもの氏を日系外国人親の漢字の氏へ変更する手続については、日系外国人親の漢字の氏への変更|必要資料と手続を司法書士が解説で確認できます。

本来の漢字の氏を証明するために準備する資料

日系外国人配偶者の漢字の氏への変更では、希望する漢字の氏が、任意に選んだ漢字ではなく、外国人配偶者の本来の氏であることを、事案に応じて複数の資料によって証明することが求められます。

準備する資料としては、たとえば次のようなものがあります。

  • 日本人配偶者の戸籍
  • 日系1世の除籍謄本、改製原戸籍など、日本由来の漢字の氏を確認できる戸籍資料
  • 日系外国人配偶者と日系1世とのつながりが分かる外国の出生証明書、婚姻証明書、身分登録証明書など
  • 現地の日本人学校、日系団体の名簿など、漢字表記の氏が使用されていることを確認できる資料

日本人配偶者の戸籍では、日本人配偶者と日系外国人配偶者との婚姻関係や、戸籍の配偶者欄に記録された外国人配偶者の氏を確認します。

日系1世の除籍謄本や改製原戸籍などは、希望する漢字の氏が日本由来の氏であることを確認するための中心的な資料です。

さらに、外国の出生証明書、婚姻証明書、身分登録証明書などにより、日系外国人配偶者と日系1世との親族関係をたどります。これにより、外国の証明書上の氏と、日本側の戸籍資料に記録された漢字の氏とのつながりを証明します。

また、現地の日本人学校や日系団体の名簿など、漢字表記の氏が実際に使用されていることを確認できる資料は、本来の漢字の氏を示す独立した証拠となる場合があります。

外国の証明書を提出する場合は、日本語訳文を添付します。実際に必要となる資料は、外国人配偶者の国籍や日系何世にあたるか、日本側の戸籍資料の取得状況、外国証明書の記録内容によって異なります。

申立てから許可後の届出までの流れ

日系外国人配偶者の漢字の氏へ変更する場合は、家庭裁判所へ氏の変更許可申立てを行い、許可を得た後に市区町村へ氏の変更届を提出します。

外国人配偶者の氏への変更手続全体については、国際結婚と戸籍の苗字|外国人配偶者の氏に変更する手続きを解説で確認できます。

日系外国人配偶者の本来の漢字の氏へ変更する場合は、家庭裁判所への申立ての中で、変更を求める理由と、希望する漢字の氏が外国人配偶者の本来の氏であることを証明します。

申立書には、申立人、現在の氏、変更後の氏、申立ての理由などを記載します。氏の変更許可申立書の書き方については、氏の変更許可申立書の書き方|家庭裁判所への申立てを司法書士が解説で確認できます。

家庭裁判所で氏の変更が許可された場合は、審判書を受け取り、許可の審判が確定した後、確定証明書を取得してから、市区町村へ氏の変更届を提出します。

許可後の氏の変更届では、審判書や確定証明書を添付して、戸籍上の氏の変更を市区町村へ届け出ます。届出に必要な書類や届書の書き方については、氏の変更届の手続き|許可後に必要な書類と届書の書き方を司法書士が解説で確認できます。

この手続では、家庭裁判所で許可を得る段階と、市区町村で戸籍に反映する段階が分かれています。そのため、申立ての準備だけでなく、許可後の届出までを見通して進めることが重要です。

日系外国人配偶者の漢字の氏への変更手続きの流れ

よくある質問

日系外国人配偶者の氏がローマ字で記録されていても、漢字の氏へ変更できますか。

外国の証明書ではローマ字などで記録されていても、その氏が本来は日本由来の漢字の氏であることを資料によって証明できる場合には、日本人配偶者がその漢字の氏へ変更することを検討できます。ただし、任意に選んだ漢字へ変更できるわけではなく、日系外国人配偶者の本来の漢字の氏であることを証明する必要があります。

婚姻から6か月以内であれば、家庭裁判所の許可なしで変更できますか。

日系外国人配偶者の本来の漢字の氏へ変更する場合は、婚姻から6か月以内であっても、戸籍法107条2項の届出ではなく、戸籍法107条1項による氏の変更許可申立てが必要になります。

外国人配偶者の住民票に漢字の通称氏がある場合はどうなりますか。

外国人配偶者の住民票に漢字の通称氏が記録されている場合は、通称氏への変更として検討できます。この場合は、外国人配偶者の住民票に記録された通称氏へ、日本人配偶者の氏を変更する手続きで確認できます。

日本側の戸籍や除籍が見つからない場合でも申立てできますか。

日系外国人配偶者の親族の戸籍などが見つからない場合でも、不可能だとは限りません。本来の漢字の氏をどのような資料で証明するかが重要です。たとえば、現地の日系団体などの資料など、事案に応じて利用できる資料を検討することになります。

まとめ

日系外国人配偶者の氏が外国の証明書ではローマ字などで記録されていても、その氏が本来は日本由来の漢字の氏であることを証明できる場合には、日本人配偶者がその漢字の氏へ変更することを検討できます。

この場合、戸籍の配偶者欄に記録された外国人配偶者の氏のとおりに変更する戸籍法107条2項の届出ではなく、戸籍法107条1項による氏の変更許可申立てによる必要があります。

申立てでは、希望する漢字の氏が任意に選んだ漢字ではなく、日系外国人配偶者の本来の氏であることを、戸籍などの資料によって証明します。

家庭裁判所で氏の変更が許可された後は、審判書と確定証明書を取得し、市区町村へ氏の変更届を提出して、戸籍上の氏を変更します。

日系外国人配偶者の漢字の氏への変更では、どのように本来の漢字を証明するかがもっとも重要です。必要な資料や証明内容は事案によって異なるため、具体的な資料を確認しながら手続を進めることが求められます。

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