子どもが大きくなったので、やっぱり旧姓に戻したい|戸籍上の氏を戻す手続き

子どもの成長をきっかけに旧姓へ戻す手続のイメージ

離婚時には、子どもの学校生活や生活環境を考えて、婚姻中の氏を名乗り続けることを選ぶ方がいます。

その後、子どもの成人・就職・結婚など、子どもの生活が次の段階に進んだことをきっかけに、やっぱり自分自身の氏を旧姓へ戻したいと考える方もいます。

子どものために婚姻中の氏を名乗り続けてきた方が、子どもの成長後にあらためて自分の氏を見直したいと考えることは、不自然なことではありません。

離婚後に婚姻中の氏を継続して名乗っている方が旧姓へ戻すには、家庭裁判所の許可が必要です。この記事では、子どもの成長をきっかけに旧姓へ戻したいと考える場合の考え方と、子どもの氏への影響を整理します。

子どもが大きくなった後に旧姓へ戻したいと考える方へ

離婚時に婚姻中の氏を名乗り続けることを選んだ方の中には、子どもの学校生活や友人関係、周囲への説明、親子で氏が違うことなどの不便を考えて、その選択をした方が少なくありません。

しかし、子どもが成人し、就職し、結婚し、あるいは独立して生活の場を移すようになると、婚姻中の氏を継続して名乗ることの意味は薄れていきます。子どもの生活を優先して婚姻中の氏を名乗り続けてきた方が、この段階であらためて自分自身の氏を見直したいと考えるのは、自然な心の動きです。

旧姓へ戻したいと考えるきっかけは人によって異なりますが、子どもが大きくなったことは、離婚後も婚姻中の氏を継続して名乗ってきた方にとって、氏を見直す代表的なきっかけの一つといえます。

もっとも、旧姓へ戻すためには、一定の手続が必要になります。次の章で、その手続の内容を確認していきます。

離婚後に婚姻中の氏を名乗っていても、旧姓へ戻す手続はある

離婚時に婚姻中の氏を名乗り続けることを選んだ場合でも、その後に旧姓へ戻すことがまったくできなくなるわけではありません。離婚後も婚姻中の氏を名乗っている方が、後から旧姓へ戻すには、原則として家庭裁判所で氏の変更許可を得る必要があります。

離婚届を出したときのように、市区町村への届出だけで当然に旧姓へ戻すことはできません。この点は、離婚時に旧姓へ戻る場合や、離婚後3か月以内に婚姻中の氏を名乗る届出をする場合とは異なります。

旧姓へ戻す手続全体の流れや、離婚・配偶者死亡後などケース別の違いについては、関連記事「旧姓に戻す手続き|離婚・配偶者死亡後のケース別に司法書士が解説」で解説しています。

参考:民法767条
第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
参考:戸籍法77条の2
第七十七条の二 民法第七百六十七条第二項(同法第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、離婚の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

子どもの成長をきっかけに旧姓へ戻したいと考えるケース

子どもが大きくなったことをきっかけに旧姓へ戻したいと考える場合でも、その背景は一つではありません。

子どもが成人した、就職した、独立したという場合と、子どもが結婚した、孫が生まれたという場合とでは、親が感じる生活上の変化も異なります。

ここでは、子どもの成長をきっかけに旧姓へ戻したいと考える代表的な場面を、生活上の変化に分けて確認します。

子どもの成人・就職・独立をきっかけにする場合

子どもが成人すると、日常生活で親が担ってきた役割は少しずつ小さくなっていきます。就職して家を出た場合や、独立して一人暮らしを始めた場合には、親子が同じ生活圏で過ごす時間そのものも減っていきます。

子どもの入学や卒業、行事といった場面で名字を意識する機会も、子どもが独立すれば自然と少なくなっていきます。こうした変化は一つの出来事で一気に訪れるわけではなく、子どもの成長の段階を経て、少しずつ積み重なっていくことが多いといえます。

離婚時に子どもの生活を考えて婚姻中の氏を名乗り続けてきた方にとって、こうした変化は、氏について考え直す一つの区切りになります。

このような変化を経て、あらためて自分自身の氏を旧姓へ戻したいと考えることは、不自然なことではありません。

子どもの結婚や孫の誕生をきっかけにする場合

子どもが結婚すると、子ども自身の生活の中心は新しい家庭に移っていきます。孫が生まれれば、子どもは親としての立場を持つようになり、以前とは違う形で自分の生活を築いていきます。結婚式や出産といった場面では、親としてどのように振る舞うかを意識する方も少なくありません。

そうした場面を一つずつ見届けていくうちに、少しずつ自分自身の今後の生活を考える余裕が生まれることもあります。子どもの結婚や孫の誕生は、子ども自身の人生が新しい段階に進んだことを示す節目であり、その節目をきっかけに、自分の氏を見直したいと考える方もいます。

子どもの氏や戸籍にどのような影響があるかは、子どもが親と同じ戸籍にあるか、すでに別の戸籍にあるかによって異なります。次の章で確認します。

親が旧姓へ戻すと子どもの氏や戸籍はどうなるのか

親が旧姓へ戻す場合、子どもの氏や戸籍がどうなるのかを心配される方は少なくありません。この場合は、子どもが親と同じ戸籍にいるのか、すでに別の戸籍にいるのかによって、大きく異なります。

また、親だけが旧姓へ戻りたいのか、子どもも親と同じ氏を称したいのかによって、必要になる手続も変わります。

子どもの戸籍の状態によって影響は異なる

子どもの氏や戸籍への影響は、子どもが親と同じ戸籍にいるか、すでに別の戸籍にいるかによって異なります。

親と同じ戸籍にいる子ども

親と子どもが同じ戸籍にいる場合、親が裁判所の許可を得て旧姓へ戻すと、同じ戸籍にいる子どもの氏も当然に変わります。したがって、子どもが成人していて、すでに社会生活の中で現在の氏を名乗っている場合には、親と一緒に氏を変更するのかを確認しておくことが大切です。

子どもが今の氏を維持したい場合には、親の氏の変更前に分籍の手続きを検討します。分籍とは、現在の戸籍から出て、自分を筆頭者とする新しい戸籍を作る手続です。ただし、分籍ができるのは成年に達した子どもに限られます。

子どもが未成年であれば、民法791条(子の氏の変更)の手続きを使って、別の親の氏を名乗ることも可能です。

参考:戸籍法100条
第百条 分籍をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
 他の市町村に新本籍を定める場合には、戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。

すでに別の戸籍にいる子ども

子どもがすでに結婚している場合など、親とは別の戸籍にいることがあります。この場合、親が旧姓へ戻しただけでは、別の戸籍にいる子どもの氏が当然に変わるわけではありません。

成人した子どもや結婚した子どもについては、すでに本人の戸籍や生活上の氏が別に形成されていることがあります。そのため、親が旧姓へ戻す手続と、子どもの氏を変更する手続は分けて考える必要があります。

別の戸籍にいる子どもが親と同じ氏を称したい場合

すでに別の戸籍にいる子どもが、旧姓へ戻った親と同じ氏を称したい場合には、親の氏の変更だけでは足りません。

子どもが父または母と氏を異にする場合には、民法791条に基づき、家庭裁判所の許可を得たうえで、戸籍法の定める届出をすることによって、その父または母の氏を称することができます。

子どもの氏を変更する手続の詳しい流れについては、関連記事「子供の名字の変更の手続き|子の氏の変更許可申立てから戸籍届までを司法書士が解説」で解説しています。

参考:民法791条
第七百九十一条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
 子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
 前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
参考:戸籍法98条
第九十八条 民法第七百九十一条第一項から第三項までの規定によつて父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

子どもの氏・戸籍への影響のまとめ

親と同じ戸籍にいる子ども:親の氏変更にあわせて、子どもの氏も当然に変わります。今の氏を維持したい場合は分籍(成年の子に限る)を、未成年で別の親の氏を称したい場合は民法791条の手続を、いずれも親が手続きを始める前に検討します。

すでに別の戸籍にいる子ども:親が旧姓へ戻しても、子どもの氏は当然には変わりません。旧姓へ戻った親と同じ氏を称したい場合は、民法791条に基づく子の氏の変更許可と、その後の届出(戸籍法98条)が必要です。

子どもの成長以外にも、旧姓へ戻したいと考えるきっかけはある

生活の節目で、旧姓へ戻したいと考えるのは、子どもの成長だけとは限りません。ここでは、子どもの成長以外のきっかけを紹介します。

定年退職や仕事上の区切りがついた

離婚後も婚姻中の氏を名乗り続けてきた方の中には、職場や取引先との関係、資格など、仕事上の事情で婚氏続称した方もいます。定年退職や転職などによって状況が変化すると、今後の生活では旧姓を名乗りたいと考える方もいます。

親の介護や実家との関係を考えるようになった

離婚後に婚姻中の氏を名乗り続けてきた方でも、親の介護などで実家との関わりが増えること、あるいは実家に戻って同居することをきっかけに、婚姻前の氏をあらためて意識するようになる方もいます。

転居や生活圏の変化をきっかけにする場合

引越しなどで生活圏が変わる場面でも、周囲に氏を説明する機会が変わることから、自分の氏を見直したいと考える方もいます。

よくある質問

離婚後、子どもが大きくなってから旧姓へ戻したいと考えるのは不自然ですか?

不自然なことではありません。離婚時に子どもの生活を考えて婚姻中の氏を名乗り続けてきた方が、その後、子どもの成人・独立などをきっかけに、自分自身の氏を見直したいと考える方もいます。

ただし、離婚後に婚姻中の氏を名乗っている方が後から旧姓へ戻すには、家庭裁判所の許可が必要です。

親が旧姓へ戻すと、子どもの氏や戸籍にも影響しますか?

子どもが親と同じ戸籍にいるか、別の戸籍にいるかによって異なります。親と同じ戸籍にいる子どもは、親の氏の変更にあわせて氏が変わりますが、すでに別の戸籍にいる子どもの氏は当然には変わりません。

別の戸籍にいる子どもの氏も旧姓へ戻した親と同じ氏にしたい場合や、逆に同じ戸籍にいる子が今の氏を維持したい場合には、親の手続とは別に、子どもの戸籍上の対応をあわせて検討する必要があります。

離婚後、子どもの成長以外の生活の変化で旧姓へ戻したいと考えることはありますか?

あります。定年退職や転職など仕事上の区切り、親の介護や実家との関係、転居や生活圏の変化などをきっかけに、旧姓へ戻したいと考える方もいます。

ただし、どのような事情がある場合でも、離婚後に婚姻中の氏を名乗っている方が後から旧姓へ戻すには、家庭裁判所の手続を前提に考える必要があります。

まとめ

離婚後に婚姻中の氏を名乗り続けてきた方が、子どもの成長をきっかけに旧姓へ戻したいと考えることは、不自然なことではありません。

子どもが成人した、就職した、結婚した、独立したなど、子どもの生活が次の段階に進むと、離婚時に婚姻中の氏を選んだ事情と実際の生活は乖離していきます。その節目で、自分自身の氏を見直したいと考える方もいます。

離婚後に婚姻中の氏を名乗っている方が、後から旧姓へ戻すには、原則として家庭裁判所の許可が必要です。市区町村への届出だけでは、旧姓へ戻すことはできません。

また、旧姓へ戻した後の子どもの氏への影響もあらかじめ確認しておく必要があります。親と同じ戸籍にいる子どもは、親の氏の変更の効果が及びますが、すでに別の戸籍にいる子どもの氏は当然に変わらず、旧姓に戻した親の氏へ変更するには別途手続きが必要です。

旧姓へ戻す手続全体の流れについては、関連記事「旧姓に戻す手続き|離婚・配偶者死亡後のケース別に司法書士が解説」で解説しています。

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