戸籍上の氏(名字、苗字、姓)は、家庭裁判所の許可を得て変更することができます。改姓の許可をるためには、やむを得ない事由が必要です。ここでは、家庭裁判所の手続きやどういった事情がやむを得ない事由にあたるのかを解説していきます。また、やむを得ないとは言えないけれども、例外的に裁判所が許可をする事例もあります。
戸籍に記録された氏(苗字)を変更する方法
色々な事情があって、戸籍に記録された氏(苗字)を変更したいということもあります。
氏を変更するためには、家庭裁判所にやむを得ない事由があると証明して、氏の変更許可をえたうえで、戸籍の届(氏の変更届)を市区町村の戸籍窓口にする必要があります。(戸籍法107条第1項)なお、市区町村が氏の変更届を受け付けた時に、氏の変更の効力が発生します。
戸籍法第107条 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
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氏を変更するために必要なやむを得ない事由
裁判所が配布している申立書のひな形にやむを得ない事由の例として、以下の理由が挙げられています。
- 婚姻前の氏にしたい。婚姻中の氏にしたい。
- 外国人配偶者の氏にしたい。
- 通称として永年使用していた。
- 外国人の父・母の氏にしたい。
- 外国人配偶者の通称にしたい。
- 奇妙な氏である。難しくて正確に読まれない。
- 通称として長年名乗っている。
これは、あくまでやむを得ない理由の例ですので、この他の理由でもやむを得ないと裁判所が判断すれば、裁判所は改姓を許可します。
婚姻前の氏にしたい。婚姻中の氏にしたい。
婚姻前の氏にしたい。
婚姻前の氏にしたい場合とは、離婚時に婚姻中の氏を名乗ることを選択した後、事情が変わって婚姻前の氏(旧姓)に戻す場合です。
詳細は、「離婚後に旧姓に戻さなかった人が旧姓に戻す手続き」をご覧ください。
婚姻中の氏にしたい。
婚姻中の氏にしたい場合とは、離婚時に婚姻前の氏を名乗ることを選択した後、事情があって婚姻中の氏に戻したい場合です。
詳細は、「旧姓に関するもの」の投稿のカテゴリー一覧をご覧ください。
外国人配偶者の氏にしたい。外国人の父・母の氏にしたい。外国人配偶者の通称にしたい。
外国人と結婚しても、日本人の戸籍上の氏は変わりません。結婚後半年以内であれば、裁判所の手続をせずに外国人配偶者の氏(カタカナ表記、中国、台湾、韓国で漢字の氏がある国は漢字にできます)に日本の戸籍の氏を変更できます。
結婚後半年以上経ってしまった場合や住民票に記録されている通称氏に変更する場合は、裁判所の改姓の手続きをして許可を得る必要があります。
詳細は、「国際結婚と氏に関するもの」の投稿のカテゴリー一覧をご覧ください。
また、お子様だけ外国籍の父母の氏に変更したい場合は、「外国人親と子供の氏に関するもの」の投稿のカテゴリー一覧をご覧ください。
奇妙な氏である。難しくて正確に読まれない。
難しすぎて正確に読むことができない氏、奇妙な意味の氏等です。最近は名前の場合と同様に裁判所が厳しくなっていてなかなか許可を得られません。氏にネガティブな意味合いがあるようなことも重要視されていると考えられます。
通称として長年名乗っている。
通称氏を長年にわたって名乗り、社会生活上その通称氏がその人の氏として通用している場合です。期間については、およそ20~30年程度といわれています。
あわせて、通称氏を合理的な理由があって名乗り始めた必要があると言われていて、この理由が妥当なものである場合は10年程度の期間でも許可されることはあります。
やむを得ない事由にあたらないとされた事例
過去に裁判所がやむを得ない事由にはならないと判断した例を紹介します。
祭祀、家名の承継
いわゆる跡継ぎがいない状況で、お墓の管理のためといった場合や、旧家を引き継ぎたいといったような場合です。
親戚の中に子供がいない、同じ氏の親族がいないよう場合で、お墓や家名を継ぐことを目的とした改姓は、裁判所が許可しません。
伝統芸能や宗教指導者の地位のような場合も同じく許可されません。この場合は、養子縁組の手続きをすることになります。
再度の改姓
一度、裁判所の許可を得て氏を変更した後は、原則、もう一度裁判所の氏の変更許可を得ることはできません。
ただし、裁判所の許可を得て氏を変更した後に、婚姻や養子縁組等で氏が変わっているような場合、その他の特殊な事情がある場合は許可される可能性があります。
内縁関係
内縁関係の相手方の氏への変更は、基本的に裁判所は許可しません。しかし、最近は事情によって許可されることもあるようです。
国際結婚をした方で、結合姓・複合姓を名乗りたい場合
裁判所のひな形にはあがっていませんが、国際結婚をした方が外国人配偶者の氏との結合姓を名乗りたいこともあると思います。
この場合は、家庭裁判所の許可を得て、氏を変更する必要があります。
詳細は、「国際結婚をした日本人が、結合姓、複合姓に改姓するための手続」の投稿をご覧ください。
改姓のための氏の変更許可申立
裁判所には、氏の変更許可申立書と戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を、手数料分の収入印紙と切手を提出します。
提出する裁判所は、住所を管轄している家庭裁判所です。
氏の変更許可申立書と申立手数料・切手
氏の変更許可申立書1ページ目には、申立てをする人の本籍、住所、氏名、生年月日を記入して、署名押印をします。手続きの当事者は、戸籍の筆頭者とその配偶者ですので、配偶者がいる場合は二人そろって署名押印しなければなりません。
2ページ目には、現在の氏を新しい氏に変更することの許可を求めていること明記します。あわせて、やむを得ない事由があること、今までの経緯、氏の変更許可手続きをする事情等を記入します。もし同じ戸籍に15歳以上の子供がいる場合は、その子供の住所氏名と年齢を記入します。
手数料は800円で、800円分の収入印紙を申立書をはります。その他に、1,500円~2,000円程度、配偶者と二人で氏の変更許可申立をする場合は追加で1,000円~1,500円程度の切手(内訳は管轄する家庭裁判所ごとに決まっています)も必要になります。
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
家庭裁判所には、原則最新の戸籍謄本を添付しなければなりません。
やむを得ない事由の内容や管轄の裁判所又は担当する裁判官によっては、生まれてから現在までの全ての戸籍の提出を求められることもあります。
この他に親族の氏への変更の場合は、その戸籍を、また外国人配偶者や外国人親の氏への変更の場合は、その外国人配偶者又は親の身分関係の証明書求められる場合もあります。
家庭裁判所へは、申立書、収入印紙・切手、戸籍謄本の他に、やむを得ない事由があることを証明できる資料のコピーも提出する必要があります。
申立後の手続の流れ
申立をした後は、裁判所の審査が始まります。
審査は戸籍の内容のチェックとやむを得ない事由があることを、書面や面談で確認されます。
裁判所がやむを得ない事由があると判断した場合は、改姓することの許可をして、その旨の審判書が発行されます。
改姓の許可後の戸籍届
許可の審判書を受け取った後、2週間が経つと氏の変更許可が法律上確定します。確定した後に、裁判所から確定したことの証明書を受け取ります。
確定証明書の申請は、許可が確定する前にすることができるので、許可の審判書を受け取ったら、すぐに申請することをお勧めします。
ちなみに確定証明書の発行手数料は150円で、収入印紙で納めることになりますが、郵便局や裁判所の売店で150円分の収入印紙を購入するか、コンビニで200円の収入印紙を購入して50円分を放棄します。
その後、氏の変更届、許可の審判書と確定証明書を市区町村の戸籍窓口に提出します。
以前は、戸籍の窓口に届け出るときに、現在の戸籍が必要な場合がありましたが、令和6年(2004年)3月以降は戸籍法の改正で原則不要になりました。
氏の変更届出後、2週間程度で戸籍が新しくなっていましたが、新システムの影響かわかりませんが、3週間ほどかかることもあります。住民票のある市区町村と本籍地の市区町村が別の場合は、市区町村間の連携がうまくいっていないこともあるので、届出から2週間くらいしたら電話で確認することをおすすめします。
改姓の手続の代行
当事務所では、改姓の手続の代行の依頼を受けています。
改姓の手続の代行の内容
報酬と費用
ご依頼ただいた際の報酬と費用は以下のとおりです。
戸籍の収集をする場合は、これ以外に戸籍代と戸籍を請求する際の郵送料をいただいています。
よくある質問
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